開発競争で跋扈する「ワクチンスパイ」の正体 水面下でロシアや中国の競争が加速している

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2人の消息筋によると、連邦捜査局(FBI)はここ何週間とノースカロライナ大学の担当者にハッキングに関する警告を行っていた。中国のハッキングチームは同大学の疫学研究科のコンピューターネットワークに侵入を試みたものの、成功はしていないという。

中国が大学から情報を盗み取る手法はハッキングにとどまらない。一部の政府高官は、中国はアメリカの大学が中国の研究機関と結んだ研究協力関係の悪用をもくろんでいると考えている。

アメリカやその他の国で活動する中国情報機関の工作員が、研究者に直接接触して情報の入手を試みたと警告する関係者もいる。トランプ政権は7月22日、ヒューストンの中国総領事館に閉鎖を命じたが、FBIによると、中国の諜報員が同領事館を前線基地として同市の医学専門家に食い込もうとしていたことが閉鎖理由の1つとなった。

中国の情報官僚が大学に狙いを定めたのは、1つには大学では製薬会社ほど強固なデータ保護策がとられていないとみたからだ。さらに研究者が査読用に次々とワクチン候補や抗ウイルス薬に関する情報を開示している現在、敵対国が製造法やワクチン開発戦略を盗み出せる機会は増えており、スパイ活動は激しさを増している、と機密情報を知る立場にあるアメリカ政府関係者は語った。

これまでのところ、外国のスパイは彼らが標的にしたアメリカのバイオテック企業(具体的にはギリアド・サイエンシズ、ノヴァヴァックス、モデルナ)からほとんど何の情報も盗み出せていない、と当局者は考えている。

米大統領選に介入したのと同じハッカー集団が…

イギリスで通信関連の傍受を行っている政府通信本部(GCHQ)がロシアの情報収集活動に気づき、アメリカの情報機関が中国のハッキングに関する情報をつかんだのと時を同じくして、アメリカの国土安全保障省とFBIはアメリカのバイオテック企業にチームを派遣し、コンピューターネットワークのセキュリティー対策を強化した。

イギリス、アメリカ、カナダの情報機関が7月に公表したロシアの諜報活動では、イギリスのオックスフォード大学、および同大学と提携したイギリスの製薬大手アストラゼネカのワクチン開発に関する情報を集めることが主な目的となっていた。

ワクチンの情報を盗み出そうとして足の付いたロシア人は、「コージーベア」として知られる、ロシア対外情報庁と関連のあるハッカー集団に属していた。コージーベアは、2016年にアメリカの民主党のコンピューターサーバーに侵入したハッキンググループの1つだ。

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