高校生「スマホ慣れ」の頼もしさと裏腹な泣き所 インターネット・リテラシー調査の結果から

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スマホを遠ざけ、禁止項目ばかりではリテラシーは向上しない。「高校1年生という常識的な知識を持つ年代が、その知恵を生かしていくためにも経験を積むことが重要です」と赤堀氏。これからのネット社会で生きていくためにも、小さな失敗やある意味で痛い目に遭うことでしかわからないことが役立つといえるだろう。

実際、「セキュリティリスク(ID・パスワード、ウイルス対策等)」の正答率は相対的に上昇している。「これらは、実質的な被害に直結するリスクのため、その危険性への認知度が高まっているのでしょう」と語る赤堀氏は「デジタルネイティブは、スマホやインターネットの酸いも甘いもわかっているのでは」と指摘する。

スマホを遊びの道具から文房具へ

しかし、である。「むしろ大きな課題は、こちらの数値にあります」と赤堀氏は懸念を示す。テストの全体正答率を、スマートフォンの平日1日当たりの利用時間別に分析すると、利用時間が長いほどおおむね正答率が低下する傾向にあることだ。どういうことか。

スマートフォンの平日1日当たりの平均利用時間は、2時間~3時間と答えた割合が25.1%と最も多かった。中でも約8割が1日当たり2時間以上利用していると回答。2018年度調査結果の約7割から増え、長時間利用の割合が増加した。休日のスマートフォン利用時間は6時間以上が29.7%と最も多く、しかも、前年度の19.2%から大きく増えている。1時間未満と1時間~2時間と回答した数値を合わせても約7%にしかならない。

一方、PISAの調査で明らかになったとおり、平日に学校外で学習のためにデジタル機器を利用している生徒の割合は、OECD平均を大きく下回る。例えば、コンピューターを使って宿題をすると回答した割合はわずかに3%。約22%というOECD平均に遠く及ばない。が、チャットやゲームの利用はOECD平均を上回っている。

「日本の高校生たちにとってのスマホは遊びやコミュニケーションの道具であり、学習の道具にはなっていません。自ら情報を探しに行き、集めた情報をまとめて発表する。スマホを学習の道具として使っていれば、長時間使用する人こそリテラシーも上がっていくのではないでしょうか。テスト結果の数値は小さな差かもしれませんが、ここに大きな課題があると言わざるをえません」と赤堀氏は語る。

加速するGIGAスクール構想をはじめ、ICTを教育で活用する機運が高まっている。「これからは、すでに設定されているゴールに向かうのではなく、主体的にアイデアを出し、正解のない領域を切り開いていかなくてはなりません。そのためにも教育への期待は大きい。子どもたちに、PCやタブレットを使ってわからないことを知り探究していく喜びや、それらを文房具となったコンピューターを使ってまとめ、プレゼンテーションする楽しさを体験してほしい。そこでは、教員が果たす役割も変わらなければなりません。これまでのように手取り足取り与えていた知識は、子どもたちが自らコンピューターで得るように仕向ける方へ変わっていくでしょう。子どもたちの自立を促し、子どもたちは与えられた課題を解くのではなく、自ら考えていく深い学びへの意識改革を期待しています」。

教育現場でコンピューターという新しい文房具を活用していくための環境づくりが急ピッチで進んでいる。インターネット・リテラシー調査の結果は、立ち止まっていては何も始まらないことを示唆しているようだ。

制作:東洋経済education × ICTコンテンツチーム

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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