JRvs静岡県「リニア問題」、非はどちらにあるか 「ヤード整備」巡り質問書と回答書の応酬合戦

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川勝知事は、「詳細はこれから事務局が説明する」と言い残して会場を後にした。しかし、事務局のブリーフィングの席上で、事態がさらに変わった。県の担当者が「JR東海がやりたいと考えている工事は本体工事と一体である。有識者会議や県の専門部会における議論の途中なのでまだ了解するわけにはいかない」という従来の発言を繰り返したのだ。

川勝知事との発言と県の説明がかみ合わない。報道陣の要望で、川勝知事への囲み取材が再度行われた。今度は、川勝知事は厳しい表情で、「本体工事と一体ということですから、認められない」と言い切った。

なぜ会談で言わなかったのか

「金子社長はヤード工事が認められたと誤解して帰ってしまったが」という質問に対しては、「金子社長にお持ち帰りいただいた資料を見れば一目瞭然です」と川勝知事。しかし会談中、川勝知事はその資料に関して詳しい説明をしていない。なぜ、ヤード整備は認められないということを直接言わずに記者会見で話したのか。困惑したJR東海は6月29日、ヤード整備を認めない理由の説明を求める文書を県に送った。

静岡県内のメディアの間でも川勝知事の発言についての反応が真っ二つに割れた。静岡新聞は7月1日に「工事着手への同意を遠回しに否定した」と報じた一方、静岡朝日テレビが7月1日に放送した番組では出演者が口々に「金子社長が何度も聞いているのに知事はなぜその場で答えなかったのか」「重要な資料をしれっと渡してはいけない」「静岡県のやり方がずるくみえてしまう」と発言している。

JR東海が回答期限と定めた7月3日午後、県から回答があった。これによれば、ヤード整備のうち宿舎用地造成などの「活動拠点整備工事」は協定を締結すればすぐにでも着工可能としたものの、JR東海が進めたいと考えているトンネル本坑整備や濁水処理設備、換気設備などの整備はトンネル掘削工事と一体であるとして、国の有識者会議や県の専門家会議の議論を踏まえた上で協定を締結すべきだとした。

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