在宅を追い風に?「通勤客減」補う鉄道の秘策 駅ナカや周辺で展開「サテライトオフィス」

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静かな環境を確保するため、電話は専用のテレフォンブースで行なうほか、グループで秘匿性の高い仕事をするための会議室もある(2016年12月5日付記事「東急がシェアオフィス事業に乗り出したワケ」)。東横線や田園都市線の主要駅のほか、沿線外でも新宿、品川、池袋といった都心のターミナル駅周辺、さらに東京意外でも大宮、千葉、大阪の梅田、なんばといったジジネス需要の多いエリアに出店。さらに他社のシェアオフィス事業やカラオケ店などとも提携することで利用可能店舗数を拡大している。

東急はサテライトシェアオフィス事業に進出した理由について、「少しでも通勤混雑の緩和に役立ってほしいから」と説明する。通勤ラッシュを避けて、朝サテライトオフィスで仕事をしてからゆっくりと出社する、夕方は早めにオフィスを出て混む前の電車に乗って、サテライトオフィスで仕事をしてから帰宅するといった活用が可能だ。

緊急事態宣言によって、ニューワークの利用者は増えたと思ったが、そうではなかった。東急の担当者は「緊急事態宣言期間中はサテライトオフィス勤務もNGで完全に在宅勤務という契約企業が多く、利用者は減少した」と話す。だが、緊急事態宣言の解除後は徐々に戻りつつあるという。現在は新型コロナ感染症対策として、直営店ではアルコール消毒液や除菌シートを常備するほか、ブース席以外の座席は1m間隔にする、混雑率50%で満席表示するなどの対策を講じているという。

JRは「駅ナカ」で展開

東急のシェアオフィスは駅周辺のオフィスビルなどで展開しているが、ずばり、駅ナカを中心にシェアオフィスを展開しているがJR東日本だ。「Staion Work(ステーションワーク)」と呼ばれるサービスで、2018年に実証実験を開始。法人契約による会員制の東急と異なり、個人でも登録可能なのが特徴だ。思い立ったら誰でも利用できる。

JR東日本の個人用シェアオフィス「ステーションブース」の室内(撮影:尾形文繁)

ボックス型の個人用シェアオフィス「Station Booth(ステーションブース)」を新宿、池袋、東京などの各駅に設置。デスクがあり、ネット環境や電源が完備され、15分単位で利用できる。料金は15分250円で、喫茶店のコーヒー代程度だ。

駅ナカとはいえ、空調も完備しており、夏の暑い盛りは喫茶店ではなく、ブース内でちょっと一服することもできる。新宿、池袋など首都圏の駅ナカが主体だが、昨年から立川駅でも営業を開始し、郊外にも展開が広がった。

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