イエレン発言に気迷うドル円相場 米国の利上げ時期、なお読めず
[東京 20日 ロイター] -イエレンFRB(米連邦準備理事会)議長の発言に為替市場が気迷いを強めている。FRBがタカ派に傾いたとの思惑からドル/円はいったん102円台を回復したものの、「早とちり」との見方もでて円売りをためらう動きも強い。ウクライナ情勢や中国経済に不安感が残ることも、リスクオンへの足かせになっている。
イエレンFRB議長の就任後初めて開催された今回のFOMC(18日ー19日)は、量的緩和縮小の継続を決め、債券購入額を月額100億ドル減らした。金融政策の先行きを示す「フォワードガイダンス」は失業率6.5%の数値基準を撤廃。声明文では量的緩和の終了後も「相当な期間」は現行の政策金利を維持することが適切だと指摘した。
ここまでは大方の予想通りだったが、イエレン議長の会見で市場が動揺した。量的緩和の終了時期を今秋頃とし、その6カ月後に金利の引き上げを開始する可能性があることを示唆したためだ。
イエレン議長は会見で、声明文の「相当な期間」について質問を受けると、「これは定義しがたい条件だが、おそらく6カ月程度とか、その種のことを意味しているだろう」と答えた。
イエレン議長は「状況次第」とも付け加えたが、この発言が同議長を「ハト派」とみていた市場参加者からタカ派的だと受け止められ、サプライズの反応となった。19日のニューヨーク市場で、ドル/円は102円前半から102.69円まで上昇した。
ただ、その後は伸び悩み、東京市場に入ってからは102円前半から半ばでもみあう展開となった。FOMCはタカ派に傾いたとの見方は「誤解」との認識が市場で徐々に広がってきたためだ。
みずほ銀行のマーケット・エコノミスト、唐鎌大輔氏は、FOMCメンバーの各年末における政策金利見通しも引き上げられており、為替市場からすればドル買いで反応せざるを得ない結果となっていると指摘。そのうえで、労働参加率の歴史的低迷が続く中、本当に資産買い入れ終了から僅か半年で利上げに着手できるのかは信じ難く、一気に円安方向には行きづらいと指摘する。
日経平均<.N225>が軟調であることもドル/円の上値を押さえる要因だ。ウクライナをめぐる東西の緊張感は依然続いている。中国の景気減速懸念もあり、投資家は積極的なリスクオンに移れないでいる。
日本側では、貿易赤字など円安要因もあるが、海外勢を中心に日銀の追加緩和期待がやや後退していることも円売りがとまっている背景だ。
SMBC日興証券のシニアマーケットエコノミスト、嶋津洋樹氏は、米金融政策を分析するうえで、個々の経済指標に目配りする必要性を指摘する。「目標が遠くある時は一つ二つの経済指標で事足りるが、(利上げに向けた)状況が近づけば近づくほど細かい差異を見ていかなければならない。引き続き失業率は注目されるが、各種の経済指標を細かく分析していくべきだ」と述べている。
(杉山健太郎 編集:北松克朗)
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