人事マネジメント 叢書・働くということ 第4巻 佐藤博樹編著 ~新時代の人事管理に豊富なヒントを与える

人事マネジメント 叢書・働くということ 第4巻 佐藤博樹編著 ~新時代の人事管理に豊富なヒントを与える

評者 江口匡太 筑波大学大学院准教授

 有能な人材の抜擢、活用はどんな組織にとっても重要だ。若かりし頃、今川家に仕えた豊臣秀吉が織田家に移ったことに象徴されるように、家柄や慣例にこだわって、有能な人材を逃してしまっては勝ち抜けない。

しかし、外部の人材の抜擢は、内部の者の意欲をそぐかもしれない。歴史に名を残した大名はカリスマ性と能力を持ち合わせていたからこそ、家臣を束ねることができたが、現代の企業は普通の人事担当者が行うものだから、いろいろと手さぐりになるのは仕方がない。本書は、いわゆるハウツーを提供するものではないが、新時代の人事管理のヒントが大いに得られる。

本書はもともと「叢書・働くということ」全8巻の第4巻にあたり、人事管理の諸課題について、それぞれの執筆者が専門的見地から分析した9章からなる。各章から拾えるキーワードを列挙すれば、人材育成、採用のミスマッチ、ワーク・ライフ・バランス、定年延長、非正規雇用の人材活用と、広い範囲をカバーしていることがわかる。

編著者による序章が人事管理の基本理論と現代における課題を手際よくまとめており、各章の導入部の役割を果たしている。どの章も読み応えがあるが、評者が最も興味深く読んだのは、第2章「人材育成の未来」だ。短期的な成果を重視する人事制度が、人材育成の質、量の両面においてダメージを与えていることが示唆されている。

成果主義それ自体は、きちんと成果が測れるならうまく機能する。ただ、どうしても短期的な視点になるのは否めない。人材育成は長期的な視点を持つから、そこに齟齬(そご)が生じている。「自律的な成長意欲を支援する仕組み」をもっと作らなければならないという主張は、多くの働く人にとって説得力に富むのではないだろうか。

さとう・ひろき
東京大学社会科学研究所教授。専門は人的資源管理。1953年生まれ。81年一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。雇用職業総合研究所(現・労働政策研究・研修機構)研究員、法政大学大原社会問題研究所助教授、同経営学部助教授・同教授を経て、96年より現職。

ミネルヴァ書房 3675円 278ページ

  

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