同和と銀行 森功著
同和と在日韓国・朝鮮人差別の問題--。前作の『許永中 日本の闇を背負い続けた男』と併せて、著者は日本の経済社会のタブーに切り込んでいる。
本書は雑誌に連載され、「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞」に選ばれた。2006年に同和のボスが大阪市との取引における業務上横領事件で逮捕された飛鳥会事件の裏側を追ったものだ。
その同和のドンと旧三和銀行で“汚れ役”としてその融資案件を担当してきた男との関わりを通じて、日本の経済の裏と表が密接に絡み合う構造が描かれている。バブル期を知る読者には懐かしい事件の数々も登場する。政財官界との癒着ぶりを示すエピソードは、アングラ勢力が、実はわれわれの生活のすぐ近くにいることを教えてくれる。
「ワシはそんなに悪やろうか」--。バブルの狂乱のなかで銀行を利用し、結局は利用された2人の人間。ピカレスク小説としての面白さや哀しさもある。
講談社 1785円
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