ザ・シティ 金融大冒険物語 浜矩子著
大時代的形容で恐縮だが、これは血沸き肉躍る「シティのドラマ」であり金融論の優れた教科書でもある。18世紀までのシティ前史を踏まえて、19世紀以降、商人(マーチャント)、貴族、産業家たちがどのように連衡、反目しつつシティの基礎を固め、大陸や新大陸と覇を競ったか、変質がいかに生じシティの没落を招いたかが明快に語られる。アナロジーやエピソードの数々は現地駐在もした著者ならでは。レトリックは今回も大いに冴えて十分楽しめる。
まず終章を読むのもよいかもしれない。全編を貫くキーノートは、シティに流れる「海賊精神」と「紳士の魂」の影響下で市場の機能が大きく変わり、そのことが商工業という本来の経済の主役に決定的な影響を及ぼしたということである。今回の金融恐慌も、シティの変質からすれば当然の帰結であったという指摘には、誰しもすんなり納得するだろう。日本を考えるうえでも示唆するところの大きい好著である。(純)
毎日新聞社 1575円
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