新幹線の車掌さん、「英語放送」ただいま特訓中 「あなたの英語は勇気が出る」と、乗客も激励
同社の乗務員2人に話を聞いた。大阪第二運輸所で車掌長を務める大橋敬左さんは平成元(1989)年生まれの30歳。「英語は中学、高校の授業の延長レベル。仕事以外の場で外国の方とお会いしたら一言も話せないかもしれない」と謙遜するが、制服姿での英語アナウンスは堂に入っている。
「ネイティブの話し方をまねてもうわべだけになってしまうので、日本人らしい話し方をして、日本人と外国人の両方が理解できるよう心がけている」と大橋さんは言う。
翻訳アプリには頼らず、できるだけ肉声で英語アナウンスをするよう努めており、「翻訳アプリは発音チェックなどの練習では使うが、実際の乗車時にはほとんど使いません」。
ほとんどのアナウンスの英語訳は頭に入っており、メモなどを見ることなく話せるが、「うろ覚えで話すのはよくないので、見える場所にメモを置き、何を言うかを必ず確認してからアナウンスするようにしています」。流暢に話すよりも情報を正確に伝えることに主眼が置かれているのだ。
失敗を重ねつつ上達
もう1人の車掌長、安井英雄さんは昭和34(1959)年生まれの59歳。国鉄入社当時は、まさか英語を使うとは思ってもみなかった。2005年愛知万博開催時に在来線で英語の肉声放送が行われた際には「カタカナをそのまま読んでいました」。相手に通じているかどうかがわからないままアナウンスしていてはいけないと、現在は特訓中だ。
痛恨の失敗談がある。leftとrightを言い間違え、「The door on the left、失礼しました、right side door will open」。
英語アナウンスの途中で思わず日本語が出てしまった。「そういうときは、Sorryと言えばいい」と、乗務員同士の勉強会でアドバイスを受けた。毎回、安井さんの英語スキルは少しずつ向上している。翻訳アプリを使う頻度も少しずつ減っている。
安井さんは、担当した列車に乗っていた年配の日本人乗客に「あなたの英語を聞くと、勇気が出ます」と言われたことが忘れられない。「つたない英語でも案内しようとする一生懸命さが、お客様に伝わったのかもしれません」と安井さんは言う。
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