カカクコム・田中実社長--価格比較へのニーズは高まっている
景気の冷え込みが一段と厳しくなるなか、価格比較サイトを主力とするカカクコムの業績が好調だ。2008年4~12月期(2009年3月期第3四半期)の営業利益は前年同期比2.3倍を記録。今09年3月期通期の最終利益も過去最高だった前期を大幅に更新しそうだ。足元の業績動向と、今後の戦略について田中実社長に聞いた。
--景気の冷え込みと逆行して08年10~12月期は好調だった。09年3月期通期の営業利益計画は33.5億円としているが、保守的ではないか。
リーマン・ショック以降、主力の価格比較サイト「価格.com」が、利用者数、ページビューともに伸びが一段と加速している。取扱品目を増やした効果もあると思うが、基本的には、景気の落ち込みを背景に、価格に対して消費者が一段とシビアになってきたことが利用の拡大につながっているのではないか。
ページビューの伸びに比例して、商品情報を掲載している店舗から掲載料を得る集客サポート事業や、直販パソコンやブロードバンド回線の顧客獲得を支援する販売サポート業務、サイトに広告を掲載する広告業務などが好調だった。
通期の予想は、昨年11月から据え置いている。毎年1~3月期はブロードバンド回線の販売が集中する時期で、その結果によって着地が大きく変わってくるなどの要素があるからだ。ただ、ブロードバンドを含め特に悪い要素があるわけではない。
--ネットショッピング業界にとって、景気悪化はむしろ追い風か?
”景気後退”のレベルなら追い風だが、”恐慌”までいくとなると厳しいだろう。景気が回復するにせよ、より深刻になるにせよ、追い風はいつかは止む。そのときに備えて、強さを磨いておかなければならない。
主力の価格.comは、よりコンテンツを強化する。5月ごろに”ウィキペディア”のようなページを作りたいと考えている。デジカメやパソコンなどの選び方や使い方のページを、利用者が作っていくというものだ。価格.comには商品に非常に詳しく、かつこだわりが強い利用者が集まっている。彼らの力を借りて、商品を探している利用者に役に立つコンテンツを作りたい。
さらに、食品などの消耗品のページをもっと充実させる。「デジモノ」などの耐久財は、恐慌ともなってしまえば需要自体がなくなってしまう。だが、日用品はどんな経済環境でも買わざるを得ない。こうした分野を強化したい。
また、飲食店に関するクチコミ投稿サイト「食べログ」も本格的な収益化に乗り出す。食べログは月間利用者数が700万人を超え、クチコミの投稿総数も約70万件と、国内トップクラスのグルメ投稿サイトになった。直近では、月間3万件のペースでクチコミが増えている。今までは、クチコミなどページの内容に連動して表示される、オーバチュアのリスティング広告が収益源だったが、掲載飲食店を対象とした本格的な広告を販売する計画だ。
これは、新店を紹介するページや、エリアのトップページに、店の広告を掲載するというもの。月間5000円から1万円程度の、非常に廉価な価格設定をする。広告だけでなく、当該エリア内でのその店の評価など、定性的・定量的なレポートも提供する予定だ。
店から広告をとるとなると、当然、店舗に都合の悪いクチコミを削除するようにプレッシャーがかかってくるだろう。だが、都合が悪い内容であっても、利用者のクチコミこそがクチコミサイトの生命線。広告営業を始めてもここは絶対に譲るなと担当スタッフにはムチを入れている。価格.comでも出店店舗に対する評価やクチコミを利用者に投稿してもらっているが、悪い物も含めすべてあるからこそ、価格.comが評価されている。
(丸山 尚文)
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