上智大学で学ぶ世界最高水準の「交渉術」とは? ハーバード・ロー・スクール交渉プログラム
学生だけでなく社会人などにも広く開かれており、森下教授自身もハーバード大学のキャンパスでPONのセミナーを受講した経験がある。
「プログラムには世界各国から参加者が集まってきます。PONには、米政府や企業に対するアドバイス経験や、諸外国での実務トレーニング経験の豊富な講師が多数おり、大学内でのセオリーの研究だけでなく、実務やトレーニングの現場において理論が検証され、またそれが研究の場にフィードバックされるというシステムが確立されています」(森下教授)
PONにおける理念の一端を紹介しよう。例えば、よりよい交渉をするために欠かすことができないのがよい「準備」だ。よりよい交渉の準備を行うためには、具体的な数字や取引条件という要素について検討しておくことはもちろんであるが、それ以上に、その背後にある当事者の「真の利益」をあらかじめ掘り下げておくことが求められる。
そのうえで、交渉というものを、相手方との対決ではなく、問題を解決するプロセスとして認識することによって、お互いにとってより生産的な活動にすることができるのだ。
PONの交渉術を日本で
PONの教育のエッセンスを詰め込んだ3日間の特別プログラム「PON Global」が、2019年9月、上智大学がホストを務める形で日本で実施される。これまでギリシャ、ドバイ、イタリア、アイルランド、イギリス、香港、メキシコ、イスラエル、ウルグアイで実施された実績のあるプログラムだ。上智大学では、15年に2日間の日程でPON Globalのパイロット・プログラムを実施したが、3日間のフルスケールで行われるのは初となる。
「3日間のプログラムでは、トレーニングの経験豊富なPONの講師が来日して指導に当たります。また、参加者は交渉の理論やスキルに関する講義を受けるだけではなく、ロールプレイやディスカッションを通じて実務的な交渉の練習を重ねることができます」(森下教授)
PON Globalの募集人数は60名。プログラムはすべて英語で行われるため、英語のコミュニケーションが取れることが必須となる。とはいえ、ネイティブスピーカーのように流暢でなくとも、仕事で英語を使っている人であれば問題ない。
プログラムは、以下の6つのモジュールから構成され、基礎から応用まで網羅された「オールインワン」ともいえるような内容になっている。
(1)Negotiation Fundamentals(交渉の基本的な枠組みを学ぶ)
(2)Creating Value vs. Claiming Value(交渉における価値の創造と分配について学ぶ)
(3)Best Practices for Difficult Situations(相手方がいやらしい戦略を用いる場合など、難しい交渉における打開策を学ぶ)
(4)Dealing Effectively with Emotions and Relationships(交渉における感情や関係という問題について学ぶ)
(5)Negotiating Across Cultures(異文化間交渉への対処法について学ぶ)
(6)Multiparty Negotiations and Organizational Challenges(複雑な多数当事者間交渉や代理人を用いた交渉について学ぶ)
日本にも交渉に関する講座は多数あるものの、(1)や(2)のような基礎的な内容だけで終わってしまうものも少なくない。


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