不沈艦パナソニック(旧松下電器産業)が今期轟沈、来期も浮上せず
電機業界屈指の収益力と業績安定度を誇ったパナソニックも巨額赤字に沈む--。
パナソニックは、今2009年3月期業績予想を下方修正し、営業利益を従来予想の3400億円から600億円へ、最終損益を300億円の黒字予想から3800億円の赤字へと引き下げた。昨年11月末に続く2度目の下方修正で、世界的な需要減退により、デジタルAV、情報・通信機器や車載関連、デバイスなど主要事業の収益が軒並み悪化する。下期は営業赤字に転落するうえ、営業外の構造改革費用も11月公表の1550億円から3450億円に積み増すため、最終赤字額は02年3月期に次ぐ過去2番目の規模に膨らむ。業績悪化を受け、配当も減らす。
08年10~12月期は、売上高が前年同期比で2割減り、営業利益は264億円と前年同期比で84%落ち込んだ。急激な世界需要の縮小と円高が響いたためで、国内売り上げは1割減、海外売り上げは現地通貨ベースでみても14%落ち込んだ。これまでの収益柱だったデジタルAVCネットワーク部門(テレビ・デジカメ等のデジタルAV機器や情報・通信機器、車載AV等)が、10~12月期は49億円の営業赤字に転落、デバイスや傘下のパナソニック電工の利益も急減した。足元の09年1~3月期は従来予想比で売上高が6000億円以上落ち込む見通しで、営業損益は2000億円近い赤字に陥る見込みだ。
こうした非常事態に対応して、同社は今期末までに国内外で27の製造拠点等を閉鎖し、来10年3月期も20前後の拠点閉鎖に踏み切る。不採算事業の撤退も進め、来期末までにグループで1万5000人規模の人員削減・配置転換を行う。また、今期に大幅な赤字となる薄型テレビ事業の立て直しを図るため、兵庫・尼崎のプラズマ2工場と千葉・茂原の液晶パネル工場の生産設備を対象に総額2400億円の減損処理を行い、来期以降の償却負担を減らす。総額3450億円に及ぶ構造改革費用の内訳は、減損と不採算事業撤退等で3000億円、人員関連で300億円、拠点統廃合が150億円。こうした構造改革により、同社は来期に1000億円の収益効果を見込んでいる。
ただし、そうしたリストラ効果を加味しても、来期の業績環境はさらに厳しい。景気悪化が顕在化した昨年秋よりも足元の環境はより厳しさを増しているうえ、来期は今期と違って上期の貯金もないからだ。
上野山実・経財務担当取締役は決算会見の席上、「今年度と比較すると、来年度は(営業損益段階で)3000億円程度の悪化要因があると思う」とコメント。今回の構造改革効果(1000億円)だけでは埋めきれないため、会社側は来期も構造改革を継続し、さらに全社的なコストバスターズ活動、設備投資削減等の施策を総動員して、業績悪化を食い止める意向だ。
しかし、この経済環境が続けば、現在明らかになっている施策のみではマイナス要因を完全に打ち消すのは難しく、「東洋経済オンライン」は来期の営業赤字を予想。また、営業外で一定の構造改革費用が続くとみて、表記程度の最終赤字を予想する。
(渡辺 清治)
《東洋経済・最新業績予想》
(百万円) 売 上 営業利益 経常利益 当期利益
◎本2008.03 9,068,928 519,481 434,993 281,877
◎本2009.03予 7,750,000 60,000 -380,000 -380,000
◎本2010.03予 7,000,000 -50,000 -170,000 -170,000
◎中2008.09 4,343,711 228,154 203,296 128,492
◎中2009.09予 3,400,000 -150,000 -200,000 -200,000
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1株益¥ 1株配¥
◎本2008.03 132.9 35
◎本2009.03予 -183.5 30
◎本2010.03予 -82.1 15-30
◎中2008.09 61.6 22.5
◎中2009.09予 -96.6 7.5-15
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