JR九州とは違う、西鉄「レストラン列車」の勝算 秘密兵器は車内の「窯」で焼く出来たてピザ
プロデュースを担当した同社の甲斐政博さんは、この列車のコンセプトについて「(西鉄からは)街に愛される観光列車にしたいということで、福岡県内に住んでいる方をターゲットとした列車をつくろうということでスタートしました。なので、ラグジュアリーといった方向ではなく、温かい家のような雰囲気の空間や料理を目指しています」と説明する。
メインディッシュをピザにしたのはその1つだ。「福岡は食材が豊かでレベルが高いので、新鮮な食材を生かして温かい料理を提供したい、そしてお子様からお年寄りまで食べやすいという点も考えました」(甲斐さん)。
ピザは、軽井沢や東京、京都でレストランを展開する「エンボカ」代表の今井正さんが監修し、地域の野菜を生かしたメニューを季節替わりで提供する。九州には店舗がないため、この列車でしか食べられない点も売りの1つだ。
店舗とは異なる列車内の窯での焼き方は「野菜の水蒸気などで条件が変わってくるので、なかなか難しい」(今井さん)といい、2年ほど前から車内と同じ窯を使って試行錯誤を繰り返してきたという。
「ホームタウン」を見直す機会に
車内のデザインは、まさに「家」の雰囲気だ。窓は洋風建築のような格子状で、郊外の駅に止まっているときの車内は、列車内というよりはこぢんまりとしたレストランの店内といった風情。天井には福岡県八女市の名産品である竹細工をあしらい、いすなどは家具生産高日本一を誇る同県大川市産の「大川家具」を使うなど、列車名である「筑後」(福岡県南部)の地域性を強く意識している。
内装を手がけたランドスケーププロダクツの中原慎一郎さんは「ただ『家』っぽい雰囲気を出したいというだけではなくて、伝統工芸を取り入れることで自分たちの『ホームタウン』を見直すことになるといいなと考えた」と、デザインの狙いを語る。
もっとも、食事や内装に地域の産物を取り入れた観光列車は珍しくない。だが、この列車の場合、地域性をアピールする対象は地元客だ。
西鉄の観光列車プロジェクト担当、吉中美保子課長は「自分の住んでいるところのものが使われていると関心も湧くし、うれしいですよね。地域のいいものを取り入れることで(地元客に)『自分も関わっている』と感じてもらえれば」と話す。
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