世界金融危機 開いたパンドラ 滝田洋一著 ~未曾有の出来事の現場を臨場感たっぷりに描く

世界金融危機 開いたパンドラ 滝田洋一著 ~未曾有の出来事の現場を臨場感たっぷりに描く

評者 ユナイテッド・マネージャーズ・ジャパン会長高橋 誠

 昨年の世界経済は、リーマン・ブラザーズの破綻した9月以前と以後では様子がまったく異なってしまった。パラダイムがシフトしたと言ってよい。未曾有の出来事が、あまりに一気呵成に生じた昨年を振り返り、現状を改めて確認することも有意義であろう。

本書は、昨年9月「今そこにある危機」のニューヨークに赴任した日経編集委員による金融危機の現場からの報告である。氏が日本経済新聞や日経ヴェリタスに書く署名入りの記事のように、本書でも辛口の「滝田節」が如何なく発揮されている。

金融危機の発端である2007年夏のパリバ・ショックにはじまり、ベアー・スターンズの救済、ポールソン長官の「バズーカ砲」発言がでた住宅金融公社(GSE)の支援法の議論などから、リーマン破綻後のAIG救済などの経過を振り返る。

サブプライム問題の生成、発展を検証しつつ、CDO(債務担保証券)という「ミンチ肉」の証券化の中身の解説など具体的な例もありわかりやすい。同時にグリーンスパンの金融政策が問題の醸成に大いに働いたことも事実だ。今や落ちた偶像となった彼が残した膨大なツケを解決する立場にあるのがバーナンキだが、その彼も理事の時代にそれを幇助していたわけだ。

米国の金融問題だけでなく、日本の成長路線の議論、中国が大量にGSE債を保有していたため米国が救済せざるをえなかったなど、中国、ロシア訪問に基づく記事も興味深い。

圧倒的な取材力に裏打ちされた臨場感あふれる描写(時にはたっぷり皮肉を利かせて)、表だって報道されない逸話に加えて、随所に出てくる絶妙なたとえは読者を飽きさせない。

その後のグローバル経済の構造変化を現場発の続編として大いに期待したい。

たきた・よういち
日本経済新聞社米州総局編集委員。1957年生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程(法学研究科)修了、日本経済新聞社入社。金融部、チューリッヒ支局、経済部編集委員、論説副委員長などを経る。

日経プレミアシリーズ 892円  235ページ

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