建築家がデザインすると鉄道車両はこう変わる 西武と小田急の新型特急、他社にはない特徴
ここまで書いてきたように、外観については鉄道事業者の要望や車両規格などもデザインに大きく関係している。むしろ車内のほうが、それぞれの建築家の個性が発揮されているのではないかと考えている。
岡部氏はイタリアの著名な建築家レンゾ・ピアノのオフィスで働き、パリのポンピドゥーセンターなどを手がけた後、関西国際空港第1旅客ターミナルのプロジェクトリーダーを務めた。その後1995年に独立して岡部憲明アーキテクチャーネットワークを設立。50000形を契機に小田急グループとのつながりを深めている。
関空第1旅客ターミナルを使った人であれば、搭乗口の高いドーム型天井と機能的でありながらカラフルないすを覚えているかもしれない。
小田急ロマンスカーにはこのセンスが反映されていると感じている。現実に50000形以降の座席は、関空第1ターミナルのいすも手がけたオカムラとの共同開発となっている。
対する妹島氏は伊東豊雄建築設計事務所勤務を経て、1987年に自身のオフィスである妹島和世建築設計事務所を設立しつつ、8年後には同じ建築家の西沢立衛とともに SANAA というユニットも創設している。後者では金沢 21 世紀美術館、前者では東京都のすみだ北斎美術館などを手がけており、鉄道分野ではJR東日本日立駅が知られている。
柔らかい印象のラビューの座席
西武001系の車内は日立駅を思わせる。床から天井まで達する窓越しに周囲の景色が一望でき、通路やカフェに置かれたいすは柔らかい形で、そこで過ごす人の気持ちを和ませる。
大きな窓の脇に、体を包み込むようなデザインと優しい黄色のカラーを持つ座席を置いた001系に通じるものがある。
個人的には小田急70000形は車体色のコーディネート、西武001系は座席がもっとも優れていると感じている。だからといって70000形の外観と001系の内装を組み合わせれば理想というわけではない。2つの特急車両は誕生の目的も走行する環境も異なる。それぞれのストーリーを含めて評価していくことが大切だと考えている。
ともに東京のターミナルを起点とし、関東地方の観光地を目指す小田急と西武の特急列車は、たとえば箱根を出て秩父に向かうようなスケジュールを組めば、1日で乗り比べができる。異なる個性を持つ2人の建築家の作品を味わいながら、観光地を巡るという旅も悪くないと思っている。
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