建築家がデザインすると鉄道車両はこう変わる 西武と小田急の新型特急、他社にはない特徴
ちなみに小田急は、先に登場した50000系と60000系の窓回りは基本的に同じ構造で、幅4mの連続窓とすることで風景の移り変わりが連続的に見えるようにしつつ、高さは抑えている。車体の曲面に溶け込ませるという理由もあっただろう。一方70000形では曲面ガラスを用い、幅は約2mに抑える代わりに縦方向を拡大している。
こちらは同じ小田急グループで、やはり岡部憲明アーキテクチャーネットワークがデザインした箱根登山鉄道アレグラ号3000・3100形の実績を生かしたとのことである。運転席後方側面に床から天井近くまで達する展望窓を設置し、側面の窓も高さ方向を1200mmと大きく取っている。西武001系に匹敵するサイズだ。
アレグラ号が窓を大きく取った理由として、渓谷に沿って走る登山列車は上下に広がる景色が特徴であることを挙げている。この点は秩父の山間部を走る西武の特急車両と共通する。箱根湯本が終点のロマンスカーとは異なる沿線環境であり、大窓の採用は納得できる。
車体色を見比べると…
色について西武001系は、アルミ製であることをアピールするようなシルバー1色。塗り分けはなく、大きな窓とそこからのぞく車内との対比をアクセントにしているようだ。
ここでも従来の西武特急車両との関連性はない。シルバーのカラーは建築物とのイメージが近く、風景との同化を考えた妹島氏の考えが反映されていると理解している。
一方の小田急70000形は、LSE7000形の代替ということもあって、運転台を上に配置することで得られた展望室、赤を基調とした塗色など、ロマンスカーの伝統の継承が念頭にあったことが伝わってくる。
しかし同じ赤でも運転席や屋上機器はやや深い色とし、側窓下には多くのロマンスカーが継承してきたバーミリオンオレンジの細いストライプを入れるとともに、展望窓の支柱と床下カバーをシルバーとすることで、上下方向のボリュームを薄め、スマートな編成に見せていることに好感を抱いた。
地下鉄乗り入れ用の60000形がこれとは対照的に青なのは、地下にあっても青空が連想できるようにという発想からきているようだ。しかしこちらにも、側窓下にバーミリオンオレンジのストライプが入っている。白い車体の50000形もそうで、岡部氏が考えたロマンスカーのアイデンティティのひとつと言えよう。
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