武蔵小杉駅、タワマン以外にもある混雑原因 南武線沿線が発展、横須賀線に乗り換え殺到
いま武蔵小杉周辺で最も注目されているのは、東急の高架と東海道新幹線の高架の間に広がるエリアだ。タワーマンションが何棟も建つ景色は、近年の武蔵小杉の人気を象徴する。また、東急電鉄の武蔵小杉駅周辺には2013~2014年にかけて「ららテラス武蔵小杉」・「武蔵小杉東急スクエア」・「グランツリー武蔵小杉」と大型商業施設が相次いで開業し、ショッピングゾーンも形成された。
中でも、セブン&アイ・ホールディングスのショッピングモールである「グランツリー武蔵小杉」は多摩川の向こうの目黒区や世田谷区まで射程に入れた大型のモールだ。確かに、ほかの同グループのショッピングモール「アリオ」と比較すると高級感が漂う。一方で、東急武蔵小杉駅の西側やJR南武線の北側には昔の雰囲気も残る。
人口急増の背景は開発史にあり
武蔵小杉駅の混雑の原因としては、タワーマンションの建設による人口増がよく指摘される。国土交通省が5年ごとに行う公共交通の利用実態調査「大都市交通センサス」のデータを見ると、ラッシュアワーの1時間で約3万6000人の定期客が武蔵小杉駅を発着点としている。こちらは年間約10%の伸びで10年前の倍、人数にして約1万8000人の増加だ。
住民の増加について国勢調査を元に見てみると、武蔵小杉駅周辺で年平均3%以上の人口の伸びを示しており、特にタワーマンションが建ち並ぶ新丸子東3丁目は年平均約7%の伸び(2010年から2015年)を示した。2015年の時点では約6000人が居住している。
このように武蔵小杉駅周辺の人口が増えたのには、どのようないきさつがあったのだろうか。その答えはこのエリアの開発史にある。
この地に鉄道がやってきたのは1926年。東京横浜電鉄(現在の東急東横線)がまず開業し、翌1927年には南武鉄道(現・JR南武線)も開業した。当初この2線の交差部には本設置の駅はなく、南武鉄道が仮設した「グラウンド前」駅があるだけで、「武蔵小杉」を名乗る駅は今の中原区役所の裏手にあった。
その後、南武線沿線に工場地帯が出現し、地域が軍需景気に沸くと東横電鉄と南武鉄道の乗り換えの便を図るべきだという声が強まり、それを受けて1945年に東横電鉄の仮設駅として「武蔵小杉」が誕生する。この前年には南武鉄道は国有化され、グラウンド前駅が「武蔵小杉」となっている。ちなみに東横電鉄の武蔵小杉駅は、戦時中はラッシュアワーのみ営業する臨時駅だったが、戦後に周辺の駅を統廃合する形で本設駅となった。
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