「JR、阪急、阪神」競合区間のベスト路線は? 「大阪―神戸間」は運賃と時間以外に要因あり

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近年の傾向として、阪急、JR、阪神ともに中間駅からの利用客取り込みを強化している。阪急は1995年に岡本駅、2006年に夙川駅に特急、通勤特急を停車させた。阪神も2001年に魚崎駅、尼崎駅に直通特急、特急の全列車を停車させている。一方、JR西日本は2007年にさくら夙川駅、2016年に摩耶駅を開業させた。

ここで、約300m離れている阪急岡本駅とJR摂津本山駅、および同じく約300m離れているJR摩耶駅と阪神西灘駅を比較したい。

阪急:梅田―岡本間、 所要時間:20分(特急)、運賃:280円
JR:大阪―摂津本山間、 所要時間:19分(新快速、普通):390円
JR:大阪―摩耶間、 所要時間:26分(新快速、普通)運賃:410円
阪神:梅田―西灘間、 所要時間:32分(直通特急・特急、普通)運賃:300円

大阪(梅田)―三ノ宮(神戸三宮)の所要時間差は最大10分だったが、中間駅―大阪(梅田)間の場合は最大6分。中間駅―大阪間の場合でも速達性におけるJRの優位は変わらないが、所要時間の差は大阪―神戸間と比べると小さくなっている。これにはいくつかの要因が考えられる。阪急神戸線の特急停車駅に近いJR摂津本山駅、さくら夙川駅には各駅停車しか止まらない。阪神は「ジェットカー」と呼ばれる高加速、高減速の車両を各駅停車に使用し、主要駅でスムーズに優等列車に乗換ができるダイヤになっている。一方、JRは2016年のダイヤ改正で、芦屋駅での新快速と各駅停車との相互乗換を廃止している。

大阪側の到着する場所を確認するのがコツ 

ここまでの比較を見ると「神戸三宮から大阪へ急いでいる時はJR」と思われるかもしれない。しかし、話はそれほど単純ではない。大阪側のそれぞれの駅は微妙に離れており、相互の駅の行き来がとても不便なのだ。

阪神梅田駅(筆者撮影)

最も離れているのが阪神梅田駅―阪急梅田駅間の約400mだ。なお、「離れている」とされているJR新宿駅―西武新宿駅間は約600mだ。試しに阪急梅田駅3階改札口から阪神梅田駅まで歩いてみた。改札口から阪急百貨店までは案内板が充実しており、とてもわかりやすい。ところが、阪急の敷地を出るあたりで、パタリと足が止まった。正面に阪神梅田駅が見えるはずだが、太い柱のせいで正面の風景が確認しづらい。また、案内板の位置が行き先によってバラバラになっているので、いちいち阪神梅田駅を指し示す看板を見つけなければならない。最終的に正面方向にそのまま歩き、阪神梅田駅東口改札口に着いた。所要時間は7分だったが、大阪が初めての方は倍以上かかるかもしれない。

また、JR大阪駅から阪神梅田駅へ向うルートも距離が短いわりに複雑だ。JR大阪駅中央口からまっすぐ南へ進み、エスカレーターを下る。エスカレーターを降りるあたりに、ななめ左方向に阪神梅田駅があることを示す案内板を見つけた。案内板どおりにななめ左方向に歩くと1~2分後に阪神梅田駅に到着する。しかし、エスカレーターからななめ左に進むのではなく直進すると、わずか10秒で阪神梅田駅百貨店口に出られるのだ。

このように、大阪梅田の地下街には実情とは異なった案内板が存在するのだ。実際に、阪神梅田駅からJR大阪駅へ向かうのに、戸惑っている旅行グループを見かけた。大阪駅、梅田駅周辺の複雑な構造と案内板により、先ほど確認した阪神間の所要時間の差は相殺されてしまう。

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