上智大学が教える「国際公務員」への第一歩 国際機関への履歴書に何を書くべきか?

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「まず、英語が作業言語ですので、読み、書き、話し、コミュニケートする力が必須です。ただ、完璧である必要はなく、仕事で使えることが重要です。一方で、国際機関は専門家の集まりとも言えるので、自分の専門性を高める必要があります。できるだけ若いうちに大学院の修士号を取得し、専門性を高めるといいでしょう」(植木教授)

こう書くとハードルは相当高いように思われるが、植木教授の話によれば、入ってからの努力で何とかなる部分も大きいという。

「専門性も、仕事をしながら覚えていけば大丈夫です。すべてのところで、『OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)』が基本と考えてもらえばいいでしょう。ただ、国際機関は多くの国から異なる文化を持つ人が集まっているので、理解の精神と寛容さ、チームワークが重視されますが、それと同時に、自分の見解を持ち、適度に自己主張をする能力がないと評価されません」

日本人は、和を尊ぶ精神があるゆえに自分の意見を主張するのが苦手なことがあるが、これが国際機関の面接や論文の自己アピールにマイナスに働いてしまうこともあるという。そうした対策に、講座では、英語での論理的な意見の伝え方、面接での自己アピールの話し方、国際的な議論の場での発表の仕方なども、実際にモデルケースを扱いながら取り組んでいく。

大量破壊兵器査察団の元報道官

国際機関では、各国の力関係が影響しないように出身地域別の職員の人数配分が決められているが、まだまだ日本人の国際公務員は他国に比べ少ないのが現状だ。一方で、日本でも国際公務員を志す人は年々増えており、植木教授はこの講座で少しでもその機会を増やしたいと話す。

1999年、東ティモールを独立に導いた最初の国連東ティモール派遣団(UNAMET)で政務官兼副報道官として活動する植木教授

「社会人としてすでにそれぞれの職業で活躍している人なら、その経験を国際機関で生かすことができます。また、学生は、これからの職業選択のうえで積むべき経験を考える機会にもなります。日本にもすばらしい人材はたくさんいるので、そうした意欲ある人たちを発掘し、実際に国際公務員となって活躍するためのサポートをしていきたいですね」

植木教授自身、これまでアパルトヘイト撤廃直後の南アフリカでの初の民主選挙の監視を行ったり、イラクで国連大量破壊兵器査察団のバグダッド報道官を務めたりと、歴史の大きな転換点となったさまざまな出来事にリアルタイムでかかわってきた。もちろん容易な仕事ではないが、その醍醐味を植木教授はこう語る。

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連載「叡智が世界をつなぐ」