北朝鮮が平壌の地下鉄網拡張を報じないワケ 自慢したい偉業のはずなのに…
「北朝鮮は数十年にわたって駅を建設する計画を持っていたようだが、現在その建設のために資源を投入しているとみられる」とメルヴィン氏は最新情報について語った。「他にも地下鉄駅の計画があるが、建設されるかどうか、非常に興味深い」。
平壌の内情に通じている他の2人の情報筋は、当局による地下鉄網拡大の努力は目新しいものではないと語った。
そのうち1人の情報筋は建設の努力が始まったのは1990年代後半だと説明した。
しかし、北朝鮮国営メディアのKCNAは、金正恩・朝鮮労働党委員長が2015年11月に新たに設計した国産地下鉄車両の試運転に参加したことに注目する一方で、地下鉄路線網拡大の努力についてはまったく言及していない。
これまで、国営メディアは北朝鮮の主要な建設政策に注目し、報じてきた実績がある。なぜ、地下鉄建設については報じないのだろうか。
地下鉄建設時にあった悲惨な事故
現在までの控えめな報道は、地下鉄網建設で過去に発生した悲惨な事故が関係している、と専門家は語った。
「1971年には、大同江の下に地下鉄を通すトンネル工事中に崩落が起き、数十人あるいは数百人もの労働者が死亡した」とSino-NKウェブサイトのクリストファー・グリーン氏は言う。
「したがって地下鉄をめぐってはトラウマが生じている」と彼は説明する。「そのうえ費用の問題、つまりカネが尽きてしまえば建設できなくなる、という常に存在する危険もある。仕事を完了させてから、その後に盛大な儀式と式典でそのことを発表したほうがよいと考えているのだろう」
北朝鮮メディアは都市の象徴ではあるが未完成の柳京ホテルを整備するための長年にわたる努力についてもやはり静観していた。
エジプトの企業オラスコム社は2011年までにその建物に窓ガラスを完全に取り付けるために莫大な投資を行ったと考えられているが、北朝鮮国営メディアは、そのことを何も伝えなかった。
(文:Chad O'Carroll)
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