日産「ノート」が発売5年目なのに好調な理由 フリート販売や自社登録の動きも見逃せない

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それでもマイナーチェンジまでは、ティーダユーザーから見れば、たとえメダリストでも“格落ち”イメージは否定できなかったが、マイナーチェンジのタイミングでe-POWERが登場し、“これは面白そうだ”ということになり、一気に代替えが進んだものと考えられる。

日産では「マーチ」もラインナップされているが、タイで生産される輸入モデルということもあり、値引きもあまり拡大しないので、マーチの購入を検討している人までをノートが吸収しているともいえる。

2つ目はすでに多くのメディアで語り尽くされているが、e-POWERというメカニズムの先進性や面白さで、他銘柄(他メーカー)ユーザーを引き寄せるほどの人気となっているという点。

ノートクラスでは、HEV(ハイブリッド)となる「アクア」が人気車として君臨しているが、トヨタのハイブリッドシステムであるTHSは、燃費性能などは高いのだが、“運転する楽しさ”という点ではしばしば物足りないという声が多かった。しかし、e-POWERはワンペダルオペレーションという“飛び道具”を持っている。アクセル操作で加減速がコントロールできるということだ。

ハイブリッドやEVなどに好んで乗る人の多くは、燃費や環境性能というよりは、メカニズムや走行性能の面白さ、ある意味“おもちゃ的”な部分が充実しているので選んで乗っているという側面も否定できない。その意味で価格設定もそこそこ手ごろなノートe-POWERの存在は、今日のノートの好調な販売台数を語るうえではなくてはならない存在ともいえるのだ。

「フリート販売」や自社登録の動きも無視できない

しかし、いままで挙げた2つの理由だけでは、ノートのいまの販売実績を語り尽くすことはできない。積極的なレンタカー向けをはじめとする「フリート販売」や自社登録の動きも無視できない。

ノートのマイナーチェンジ前から、中古車展示場には1年ほど前に初度登録され、6000kmほどの走行距離のノートの中古車が多く並んでいる光景を見掛けた。

これらはカーシェアリング車両として使われたものと考えられる。また日産は自社系レンタカー会社として日産レンタカーがあり、日産レンタカーを中心にレンタカーとしてもノートを多く販売している。しかもたとえば、夏の観光シーズン用に北海道の営業所に用意したノートのレンタカー(FF)のレンタアップした車両(つまり短期間レンタカーとして使用)が、冬を迎える前に本州の中古車展示場などに置いてあった。

折り込みチラシには「レンタカーで短期間使っていただけなのでお得です」などと書かれてもいた。ディーラー名義などで、未使用で未登録の在庫車を“自社名義登録”したクルマが、登録済み未使用車(未使用中古車)として専業店や中古車展示場に並んでいるのも珍しくない。

ただ、新車販売も今どきは値引きが大きい。登録済み未使用車が登録したばかりの段階では、新車購入した場合と比較すると買い得感が薄まる。そのため初度登録後半年ほど寝かせるのが一般的と自動車販売業界では言われている。

本来なら2017年秋ごろ自社登録された車両が登録済み未使用車として今頃は店頭に並んでいるのだが、ちょうどその頃は完成検査不正問題で生産および供給停止になるなどしていたり、生産再開後もその影響で納期遅延が発生するなどしていたので、ノートの登録済み未使用車は、足元ではほとんど見掛けなくなっているのが現状である。

確かにノートの人気は高まり、数字はもちろん目を見張るものの、その中には自社登録やフリート販売の数字が含まれているのは見逃せない。ライバル車も似たり寄ったりの状況ではあるものの、自動車販売業界の間では「ノートの動きはより積極的」と指摘される。世間で人気車とされていても、中古車市場へは供給過剰状態が続きそうで、下取りや買い取りのリセールバリューに影響してくるのではと予測できる。

小林 敦志 フリー編集記者

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こばやし あつし / Atsushi Kobayashi

某メーカー系ディーラーのセールスマンを経て、新車購入情報誌の編集部に入る。その後同誌の編集長を経て、現在はフリー編集者。

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