小田急ロマンスカーGSEの「SE」が不変なワケ 車両の形は変わっても守り続けるブランド

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一方、鉄道車両のブランドは、ユーザーである鉄道会社の意志に左右される。出来上がった車両をどう名付けるかは鉄道会社の自由。伝統を守るか、目新しさを求めるかによって愛称は変わっていってしまう。

小田急の「SE」という名称は、"ブランド化"が進んだ、際だった存在と言えようか。これまで同社が投入してきた特急ロマンスカーは、同一の設計方針に貫かれた一連のシリーズというわけではない。むしろ、この60年間の社会的要請の変化に沿って設計を大きく変えつつ、現在に至っている。

それでも、小田急はSEと名付け続けてきた。それは、最終的な車両のユーザーである鉄道利用者に対し、さまざまな意味で超越した特急であるという品質を、小田急が約束しているのだ。

「SE」はロマンスカーの代名詞

小田急開成駅前で保存されているNSE。展望席は、この形式から採用された(筆者撮影)

SEを冠した車両は、3000形に続き、3100形「NSE(New Super Express)」、さらには7000形「LSE」、10000形「HiSE」、20000形「RSE」、50000形「VSE」、60000形「MSE」と送り出されてきた。頭の1文字は、「Graceful」のようにその車両を表すのにふさわしい単語が選ばれ、頭文字がつけられている。

3000形SEは、隣りの車両同士を台車でつなぐ連接構造を採用していた。これはNSE、LSE、HiSE、VSEも同じである。だが、それ以外のロマンスカーは、各車体に2台ずつ台車がある、一般的なボギー車でGSEも同様だ。RSEの2階建て車両、VSEの車体傾斜装置など、特定のロマンスカーにのみ採用された構造、技術もある。

70000形GSEの外観。展望席やオレンジ色の車体色など、ロマンスカーの伝統は受け継がれている(筆者撮影)

また、1996年に登場した30000形「EXE(Excellent Express)」は、SEを冠していない特急用電車だ。箱根への観光客輸送ではなく、町田など中間駅への通勤客輸送を重視した設計になったがゆえ、一連のSEとは一線を画したのであった。

けれども、こうした実情があったとしても、あくまで小田急ロマンスカー=SEなのである。どのように姿を変えていこうと、代名詞としてSEを守り、育てていこうという小田急の姿勢は、今回のGSE投入においても変わることはなかった。

土屋 武之 鉄道ジャーナリスト

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つちや たけゆき / Takeyuki Tsuchiya

1965年生まれ。『鉄道ジャーナル』のルポを毎号担当。震災被害を受けた鉄道の取材も精力的に行う。著書に『鉄道の未来予想図』『きっぷのルール ハンドブック』など。

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