JR秋葉原駅の高架下が「異空間すぎる」理由 飲み屋街は古い?趣向凝らす鉄道各社の戦略

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路面店が並んでいるように見えて、高架の柱や梁(はり)がそのまま残されている。「丸柱は珍しいということで、それを生かすデザインにした」と、同施設を開発したジェイアール東日本都市開発・開発事業本部の北田和美氏は説明する。丸柱と店先が織りなす光景はまるでアラブの商店街のようだ。活気あふれる秋葉原のメインストリートから想像もつかない異空間がそこに広がっていた。

1975年の貨物駅廃止や1989年の神田青果市場移転などにより、JR秋葉原駅の北側には広大な土地が創出された。これが2000年代に大規模開発され、秋葉原はオフィス街としても飛躍することになったのだが、秋葉原―御徒町間の高架下一帯は取り残されたままだった。繁華街にもかかわらず、夜になると人通りが途絶える。この状態を解消するために高架下開発計画がスタートした。

どんなコンセプトの開発を行うか。ヒントとなったのは地場産業として靴、かばんなどの革製品や傘などのメーカーが集積していた点だ。また、御徒町は日本唯一の宝飾問屋街「ジュエリータウン」として知られている。だが、これらのメーカーは製品を問屋に納めるため、利用者の声を直接聞く機会がない。そこで、「客と作り手が交流できるような施設があれば喜ばれるのではないか、と考えた」(北田氏)。これによって、「ものづくりの街」という現在のコンセプトが決まった。

2k540では高架の柱や梁(はり)をデザインに生かすことで、独特の雰囲気を作り出している(記者撮影)

ちなみに2k540というユニークな名前は、東京駅から2540メートル付近に位置することに由来する。開業は2010年。最近は日本人だけでなく、外国人観光客の姿も目立つ。「海外の旅行雑誌にも掲載されているので知って頂いているようです」(北田氏)。

飲食店や倉庫といった型どおりの高架下開発ではなく、地域特性を生かした開発としたことが、2k540のオリジナリティを高め、成功を引き寄せた。そして、ほかの路線における高架下開発のモデルケースになった。

かつて阿佐ヶ谷には「女子」向けの店がなかった

JR阿佐ヶ谷駅の高架下に誕生した「ビーンズ阿佐ヶ谷」。高架下っぽさのない店作りが特徴だ(記者撮影)

1967年の営業開始から長年にわたりJR阿佐ヶ谷駅の近隣住民に愛されてきたレトロな高架下商業施設「ゴールド街」が、おしゃれに生まれ変わった。7月にオープンした「ビーンズ阿佐ヶ谷」である。3つのゾーンから構成されるが、中でも注目したいのは新たに作られた「ビーンズてくて」というゾーンだ。高架と店舗は完全に独立している。そのため、高架上を電車が走っても振動や音が店に伝わらない。

ビーンズ阿佐ヶ谷の「ビーンズてくて」(記者撮影)

ビーンズてくての先には同じく高架下商業施設の「阿佐ヶ谷アニメストリート」がある。こちらはいかにも高架下然とした雰囲気が漂う。一方のビーンズてくては、中を歩くと高架下であることを忘れてしまいそうだ。レストランやカフェが中心の店舗構成。30〜40代の女性がターゲットで、華やかな雰囲気が漂う。

今でこそ阿佐ヶ谷は女性に人気の街となったが、ゴールド街の全盛期には庶民的なイメージが残っていた。つまり、おしゃれな女性が移り住むようになってきても、彼女たちが立ち寄りたくなるような店は少なかったのだ。そこに商機があった。「ファミリーや女性グループでのランチはもちろんのこと、遅い時間に“おひとりさま”でも安心して食事ができるお店にするよう心掛けた」と、ビーンズ阿佐ヶ谷を開発したジェイアール東日本都市開発・ショッピングセンター事業本部の西村尚史氏は話す。

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