川重・三井造船、両社長が語る破談の真相(上) 川崎重工業 村山滋社長
――なぜ、そこまでして、長谷川前社長らは三井造船との合併に固執したのでしょう。
そこがいまだによくわからない。スケールメリットだとか、海洋資源だとか、あくまで漠然とした説明しかありませんでしたから。重工大手はどこも売上高の成長が止まって久しいので、そうした状況を再編で打破したいという思いがあったのかもしれない。
長谷川さんとは長い付き合いがあるが、人に対する配慮をされる方。役員たちが反対するのを見て、ご自身の判断で交渉を撤回されるだろう、と私は思っていた。あんな風に突っ走られるとは、思いもしなかった。
事業のシナジーなく、固定費だけが重くなる
――村山さん自身は、なぜ今回の合併に反対したのですか。
三井造船と事業が重複するのは船舶海洋、プラント、エンジンの3分野。私の専門分野(=航空分野)とは違うので、まずはそうした事業を担当する取締役(カンパニー長)の意見をしっかり聞こうと。彼らはその道のプロなわけですから。その結果として、複数の事業で明確なサクセスストーリーが描けて会社のためになる、という話なら、私としても応援せんといかんなと。
しかし、どの担当役員もいろいろ分析した末に、「経営統合してもシナジーはない」「大きなメリットはない」という結論だった。だったら、一緒になっても、単に図体が大きくなるだけでしかない。むしろ、より大きな固定費を抱え込む分、経営としては非常に重くなってしまう。
「川重は各カンパニーのトップが取締役だから、みんな自分の担当事業のことだけしか考えていない」なんていうメディアの解説記事もあったが、ばかにするな、と言いたい。なんちゅうことを言ってくれるんやと。うちにそんな幼稚な役員はいない。会社の将来にとって、この再編がいいのかどうか。そこをしっかり考えたうえでの判断だった。
――三井造船が主力とする伝統的な造船関連分野は、構造的に先行きが厳しい。やはり、そこも大きなネックだった?
私個人に関して言えば、造船業界は厳しいから嫌だとか、そういうモノの考え方はしなかった。当社も船舶海洋事業をやっているわけですから、しばらくは厳しくとも、中長期的に大きなシナジーが期待できるなら、検討の余地はあると思う。でも、今回の場合、船舶海洋に限らず、プラント、エンジンにしたって、(事業を担当する)カンパニーのトップ自身が「シナジーはない」と。ですから、応援するも何も、ないわけですよ。
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