首都圏の鉄道、「廃線跡」の知られざる活用法 「細長い土地」はこうして地域住民に愛された
幡場:制約としては、真下を営業運転している電車が通過しているので、荷重制限等から高層の建物が建てられないことがあった。また、工事に当たり、電車を止めることは絶対に許されないので、安全への配慮が最優先課題だった。
――廃線跡を商業施設化した事例は珍しいと思うが、このプロジェクトを計画・推進するに当たり、参考にした先行事例などはあるか。
幡場:商業施設ではないが、鉄道の廃線跡を核に、周辺エリアを活性化させた事例として、ニューヨークのハイラインは参考にした。また、空間設計という意味では、軽井沢のハルニレテラスも参考にしている。
――ログロード代官山オープン後、およそ2年が経過するが、どのような効果が出ているか。また、今後の展望などについても教えてほしい。
幡場:オープンの前後から、計画地付近に新店舗が出店するなどしており、ログロード代官山単独で盛り上がるのではなく、周辺にも良い効果を及ぼすという目標は、ある程度、達成できていると思う。
杉本:ログロード代官山は商業施設ではあるが路面店に近い構造。施設管理者である東急がこうしてほしいとお伝えするのではなく、各店舗やお客様が集まり、さまざまな化学反応を起こしながら、今後も発展していくと思う。なお、ログロード代官山は、約10年間の暫定施設ということで始まっている。渋谷の再開発が進み、目安として10年が経過した時点で、今の商業施設としての形態がふさわしいか、別の形に変えるべきかを判断することになると思う。
渋谷には再開発計画が目白押し
さらに、ログロード代官山の先、渋谷駅へと続く廃線跡では、現在、東急電鉄により2つの再開発・整備プロジェクトが進行している。
1つは代官山側からJRの線路を越えた先の清掃工場付近で進めている「渋谷代官山Rプロジェクト」で、2017年3月に着工している。ここにはA棟、B棟と2棟の建物が建ち、待機児童対策や外国人受け入れなど地域のニーズを受けて、保育所やホテルなどが整備される予定だという。
また、東横線の旧渋谷駅(地上駅)と周辺敷地エリアでは、「渋谷ストリーム」という高層複合施設の建設が進行している。「渋谷代官山Rプロジェクト」「渋谷ストリーム」は、いずれも2018年秋に開業予定だ。
さらに、「渋谷ストリーム」から「渋谷代官山Rプロジェクト」敷地手前の「並木橋」付近までの渋谷川沿いには、官民連携事業として約600メートル続く遊歩道を整備するとともに、清流復活水を活用した渋谷川の再生も行うという。
首都圏における廃線跡の活用事例はまだある。首都圏では、茨城県の筑波鉄道跡を活用し、「つくばりんりんロード」という約40キロメートルにもわたるサイクリングロードとして整備した事例などもあり、廃線跡の活用のされ方は、場所によりさまざまだ。エアポケットのようにできた廃線跡という空き地がどのように活用されるのかは、多くの人々の関心事である。今後も、注目していきたい。
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