東京人の知らない名古屋「着席通勤」の実態 快適性と速達性、求められるのはどっち?

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名古屋エリアの「ホームライナー」や特急の乗車率向上を実現するうえでは、このほかにソフト面の改善策として、これらの列車に携帯電話で乗車できる「チケットレスサービス」導入を挙げたい。現状では、車掌が乗車整理券や特急券を所持していない旅客に対して発券を行っているが、「チケットレスサービス」を導入することで、車内改札業務の軽減につながる。

「ホームライナー」や快速「みえ」の同一座席を毎日利用できる「マイシート定期券」なども検討の余地がある。「マイシート定期券」で特急自由席の利用や「ホームライナー」の指定列車以外の立席利用も認めれば、さらなる効果が見込めるだろう。

新幹線通勤者に自治体補助を

また、東海道新幹線は在来線と比べて所要時間の差が大きく、移動時間短縮の価値が大きい。豊橋駅-名古屋駅間を新幹線で移動する場合、東海道本線新快速・特別快速、または名鉄名古屋本線快速特急・特急の半分の時間で移動できる。

たとえば、年間240日出勤する場合の新幹線利用による総節約時間は200時間に上る(東海道本線利用と比較し、1乗車あたり25分短縮として計算)。1日8時間勤務として換算すると、新幹線利用で25日分の出勤時間を節約できることになる。

同区間JR在来線の1カ月通勤定期は34,100円で、新幹線定期券FREXの1カ月は67,360円、差額は33,260円となる。新幹線定期券は少々高価ではあるが、1カ月分の休暇を取るのと同じ時間をお金で買える選択肢があると考えることが可能だ。また、地方自治体も移住・定住を促進する手段として、新幹線で通勤・通学する市民に対して新幹線定期券代の補助を行うことも、検討の余地がある。

通勤向け有料列車の利用促進に向けて、JR東海と沿線自治体が連携することで、鉄道の利用促進と地方活性化の両方の実現につながる。沿線の魅力向上のためにも、JR東海には、通勤向け有料列車のポテンシャルを上手に引き出す取り組みを進めてほしいものである。

大塚 良治 江戸川大学准教授

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おおつか りょうじ / Ryouji Ohtsuka

1974年生まれ。博士(経営学)。総合旅行業務取扱管理者試験、運行管理者試験(旅客)(貨物)、インバウンド実務主任者認定試験合格。広島国際大学講師等を経て現職。明治大学兼任講師、および東京成徳大学非常勤講師を兼務。特定非営利活動法人四日市の交通と街づくりを考える会創設メンバーとして、近鉄(現・四日市あすなろう鉄道)内部・ 八王子線の存続案の策定と行政への意見書提出を経験し、現在は専務理事。著書に『「通勤ライナー」 はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)。

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