デジカメ版「ipod」の開発を目指す家電ベンチャー

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 岩佐氏が手本とするのは、米アップル社の携帯音楽プレーヤー「iPod」のコンセプトだ。ジョグをクルッと回して選曲し、ボタンを押せば音楽が流れ出す。ウェブ上の専用ストアで新曲を買うのも楽々だ。携帯電話で音楽もテレビも視聴できる今の時代に、人々はこぞって、この白い専用端末を買い求める。

一方、音質も、バッテリーの持ちも、液晶の質も、「iPod」より、遙かに優れているはずの日本の家電メーカーの携帯音楽プレーヤーは、結局消費者の心をつかむことはできなかった。あらゆる機能をハイレベルで詰め込んだ日本製の電子機器は、その分操作が複雑になり、消費者を置き去りにしてしまったのだ。セレボが目指すのは、機能を絞りこみ、ある一定のニーズにフォーカスしていくことで使い勝手を高めたデジカメ版「iPod」だ。

「カメラ機能を含め、携帯端末がマルチ機能化している流れのなかで、デジカメは何らかの機能に特化する方向に向かいつつある」と岩佐氏は指摘する。今春カシオ計算機が出した、1秒60コマの超高速連射機能付きデジカメ「EXILIM PRO EX-F1」などはその典型だろう。今や携帯のカメラでも500万画素を有する時代。セレボはデジカメが生き残るための一つの道を指し示している。

中国、台湾の現地工場成長で、家電ベンチャー台頭の時代に

セレボのようなベンチャーの登場を促しているのは、デジタル家電業界で起こっている構造的な変化だ。

セレボは対象ユーザーを絞り、ニッチな市場の開拓を狙う戦略のため、販売するデジカメの台数は、せいぜい年間3万~4万台程度の小ロットとなる見込み。製造設備を持たず生産は外部に委託するが、三洋電機や台湾ホンハイ社などの大手OEM(相手ブランド先製造)メーカーの場合、「最小ロットは年間10万台程度から」(業界関係者)とみられる。大手デジカメメーカーでは、年間1000万台以上の販売が当たり前となってきたこの世界では、3万~4万台という小ロットのOEM生産は、従来であれば不可能なはずだった。
 
 だが、2000年代に入り、日本の大手メーカーの製造委託などをこなすなかで、中国、台湾の零細工場の技術力が向上している。レンズや画像センサーなどの基幹部品を製造するアジアの部品メーカーも台頭し、数を作らない小規模のベンチャーがビジネスを成立させられる土壌が出来上がりつつある。
 
 昨年、北米で格安の液晶テレビを発売し、薄型テレビ市場に旋風を巻き起こした米ビジオなどもこうした環境のなかで台頭してきたベンチャー企業だ。米国に続き、日本でもセレボのような家電ベンチャーが生まれつつある。同社がビジオのように大手を食う存在になると考えるのは早計だが、デジカメ業界に起こり始めた新たな動きとして注目する価値はありそうだ。
(桑原幸作 =東洋経済オンライン)

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