「性犯罪の厳罰化」はいったいなぜ必要なのか 強姦罪は強盗罪よりも処罰が軽かった?
①法定刑の引き上げについて
従来の刑法においては、男性が無理やり女性を姦淫した場合(強姦罪:懲役3年以上)よりも、無理やり人から物を奪った場合(強盗罪:懲役5年以上)のほうが罪の下限が高かったことは、被害者をはじめ多くの方から問題だとされてきました。そこで、強姦罪の下限を懲役5年以上とする改正案が提示されました。
人の性的自由を侵害する被害は男性にも起こり得る
②男性も強姦罪の被害者とすることについて
強姦罪はこれまで被害者が女性に限られ、行為態様も男性器が女性器に挿入されること(「姦淫」)に限られていました。これは、一般的に性犯罪の被害者が女性を想定されていたことや、妊娠の危険を重視していたことなどに理由があります。
しかし、暴力的に人の性的自由を侵害する行為による重大な被害は男性に対しても起こり得ますし、身体的・精神的に重大な苦痛を伴う被害を受けることについて被害者の性別によって差はないと考えられ、そこで今回の改正案では被害者に男性を加えることとされました。
被害者に男性を加えることにともない「姦淫」の定義も変わります。男性器を女性器に挿入することに加え、逆に女性器に男性器を挿入させること(この場合も議論されています。)や、男性器を男性または女性の肛門に挿入すること、口に男性器を挿入することも含まれるという試案が出されています(試案では「性交、肛門性交または口腔性交」とされています。)。
従来は強制わいせつ罪として処罰されてきた行為の中でも、肛門性交および口淫は、濃厚な身体的接触を強いられるものであって、従前の「姦淫」と同等の悪質性及び重大性があると考えられることから、「姦淫」と同様に加重処罰の対象とすることが適当であると考えられています。
これらについては少々問題が提起されています。たとえば、口に男性器を挿入すること(口腔性交)については、もちろん卑劣な犯罪ではあるものの、妊娠の危険がないだけでなく、これまで一般的に考えられてきた「強姦」とはイメージがかけ離れており、従来の「姦淫」(男性器を女性器に挿入すること)を罰していた強姦罪について下限が軽いということで厳罰化することになったにもかかわらず従来の強姦罪では対象とされていなかった行為について安易に対象としない方が良いのではないかということが指摘されています。
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