日銀は「金利」政策に移行で、追加緩和遠のく BNPパリバ・河野氏が"日銀の動き方"を解説

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――結局、枠組みの変更のみで、追加緩和は見送られました。

予想通りだった。マクロ経済が完全雇用にあり、緩やかであるが需給ギャップの改善が続いているし、前回7月末の会合でETF購入の倍増に動いた後、マクロ経済は悪化していない。また、円高が多少進んでも、ETFの購入倍増によって、株価が比較的落ち着いていることもある。

フレキシブル・インフレーション・ターゲットの枠組みに移行したのだから、今のような環境で追加緩和はあり得ない。同じロジックで、次回11月 1日の追加緩和も予想していない。

マイナス金利の深掘りもハードルは高い

――今後、追加緩和が行われる条件は?

需給ギャップの悪化に加えて、円高進行が今後の追加緩和の引き金になる可能性は高い。ただ、ETFの購入倍増で株価が下支えされ、為替レートと株価の連動性が低下しているため、今後、1ドル100円を割り込んでも、マイナス金利の深掘りは予想していない。仮に95円を割り込んでも、 90円を割り込むような恐れがないのなら、直ぐには日銀は動かないと見ている。

金利ターゲットに移行したとはいえ、マイナス金利の深掘りについても、ハードルは高まっている。政治的に反発が強いだけでなく、深掘りにも限界があるからだ。今のところ、近い将来に追加緩和があるとは予想していない。

将来、米国経済の悪化でFRB(米国連邦準備制度理事会)が金融緩和に踏み切り大幅な円高が進むか、中国人民元が大幅に切り下げられ大幅な円高が進む、それらの影響で日本経済が後退局面に入る、といった事態に備え、マイナス金利の深掘りというカードは当面、温存されるのではないか。
 

河野 龍太郎 BNPパリバ証券経済調査本部長

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こうの りゅうたろう / Ryutaro Kono

1964年愛媛県生まれ。1987年横浜国立大学卒。住友銀行、大和投資顧問、第一生命経済研究所を経て2000年から現職。政府の審議会などの委員を歴任。近著に『金融緩和の罠(共著)』(集英社新書)など。

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