日銀は「金利」政策に移行で、追加緩和遠のく BNPパリバ・河野氏が"日銀の動き方"を解説

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こうの・りゅうたろう●1987年横浜国立大学卒。住友銀行、大和投資顧問、第一生命経済研究所を経て2000年から現職。政府の審議会などの委員を歴任。近著に『金融緩和の罠(共著)』(集英社新書)など。(撮影:梅谷秀司)

――日銀はできるだけ早期に2%のインフレを実現するとのコミットメントは維持する一方、「適合的な期待形成」(実際の物価の動きに影響される予想形成)の要素が強いため、「予想物価上昇率を引き上げていくことには不確実性があり、時間がかかる可能性があることを踏まえた」としています。

既に2015年春の段階から、日銀は事実上のフレキシブル・インフレーションターゲットに移行していたと見ているが、今後は明確なフレキシブル・インフレーションターゲットでの運営となるだろう。

つまり、2%インフレの達成タイミングが先送りされたということだけで、需給ギャップが大きく悪化したり、大幅な円高が進んだりすることがなければ、追加緩和は実施しないと見られる。

ボードメンバーのマネタリストに配慮?

――「オーバーシュート型コミットメント」を採用する、として強気を強調しました。

安定的に2%インフレが達成されるまで QQE(量的質的金融緩和)を継続する、ということは、もともと念頭に置かれていたことだ。不況期のインフレ率低下を前提にすれば、好況期には2%超を容認する必要があるからだ。日銀が金融緩和策からの出口を考える際には大きな意味を持ってくるが、フォワードガイダンス(政策の先行きについての示唆)が大きく変更されたわけではない。

ここで重要なのは、今回の枠組み変更に伴い、マネタリーベース・ターゲットの棚上げに反応して円高が進むことを避けるため、「マネタリーベースの残高は、安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する」と、マネタリーベース・ターゲットを形ばかり残したことであろう。少なくとも、目標達成までマネタリーベースが縮小されることはないということだ。このことは、伝統的なマネタリスト的見解を持つボードメンバーの顔を立てる必要もあったためと思われる。

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