英国の鉄道運行に初名乗りを挙げたJR東日本 信頼性は高評価だが、EU離脱で先行き不透明
Abellio社のプレスリリースによると、同社がJR東日本および三井物産と手を組んだのは、日本の都市間、都市圏輸送のノウハウ、すなわち安全で正確な鉄道輸送システムを英国の鉄道に取り入れ、融合することで競争力を高めることが目的としており、この合弁はこのフランチャイズ獲得のために革新的な解決策を見出す、と述べている。
Abellio社は、すでにヨーロッパ各国で公共交通機関の運営に関する多くの経験と実績を持ち合わせているが、そこに日本で培われたシステムを取り入れることで、より信頼性の高い交通網を構築しようという目論見である。
また、英国内で計画が進められている高速鉄道の2期線、HS2においても運行各社に協力が求められているが、すでに長年の高速鉄道運行実績を持ち、世界最速の時速320キロ運転も行っているJR東日本が参加することは、合弁会社にとって大きなアドバンテージとなることは間違いない。
さて、この3社のうちMTR社に関しては、6月22日に入札から撤退したことが一斉に報じられた。同社はFirst グループと手を組み、サウス・ウェスト旅客路線への入札を行なう予定となっており、そちらへ注力するために撤退を決定したとのことだ。これでウェスト・ミッドランズ路線に関しては、Abellio社とGovia社による一騎打ちとなった。
英国内では、すでに日立製作所が鉄道車両納入に関して高い実績を上げており、英国の日本企業に対する信頼は日増しに高まっていることが伺え、今回のフランチャイズに対する日本企業の参入は、そういった点も考慮にあったと言えるかもしれない。
EU離脱で外国企業の進出は・・・
このように、日本企業を含め海外企業にも開かれた英国の公共交通フランチャイズ制だが、懸念されるのは先日行われた国民投票に端を発する、英国のEUからの脱退と、それに伴う海外企業や外国人労働者に対する動向だ。
すでにEU圏内からの出身者に関しては、これまでのように簡単に英国への入国手続きが進まなくなると言われている。英国のプレミアリーグサッカーでプレーするEU諸国の選手ですら、ビザ取得に様々な審査を要することになるだろうと言われているが、それどころか、実は英国では外国人入国を規制する法案(年収が35K=3万5000ポンド以下の外国籍労働者は定住ビザの取得ができなくなる)が、2016年に入って正式に可決している。
現在、英国内で働く外国人労働者の平均年収は2万6500ポンドと言われており、この条件を満たしていない大半の人たちは英国に居住する権利を失い、ビザの期限が切れた段階で英国を追われることになる。現時点では、公共交通関係で英国に進出している海外企業にどのような影響が出るかは明確ではないが、人と物の流れに関しては制限される可能性が高いため、特にグローバル企業においては、現地採用の従業員を除く管理職や技術者など、海外から英国への転勤者に影響が出る可能性も否定できない。
今回の国民投票結果の行方に加え、ますます英国への人の流れが制限されていくこのような情勢は、公共交通分野を含む日系企業進出の足かせともなりかねない。
(写真はすべて筆者撮影)
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