西武「座れる通勤列車」は、どれだけ快適か 追加料金で座席指定できる列車が来春登場

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40000系「ロング・クロスシート転換車両」のクロスシート状態のイメージ(写真提供:西武鉄道)

座席指定列車には、新型車40000系のうち座席を長手方向6人がけのロングシートと、2人がけのクロスシートの両方に変換できる「ロング・クロスシート転換車両」の編成を使用する。

座席指定列車として運行する際はクロスシートの状態となる。西武秩父線~みなとみらい線を直通すると100㎞を越える長距離となり、乗車時間も長くなるため、西武鉄道によるとロング・クロスシート転換車両にはトイレも設置する予定だ。

40000系はアルミ製車体の4ドア車10両編成で、2016年度から2020年度までに8編成計80両を導入する予定。メーカーは川崎重工で、2016年度の投資計画では2編成を新造する予定となっている。西武によると、全8編成のうち何本がロング・クロスシート転換車両になるかは決まっていない。

特急でカバーしきれていない着席需要がある

では、いったいこの新しい通勤列車は誰のためのものなのか。そして、その目的は何なのか。

西武池袋線・秩父線では現在も座席指定制の特急「レッドアロー」を運転しており、通勤利用も多い。すでに特急列車がある路線で新たに通勤用の座席指定制列車を導入する例は珍しいが、同社によると特急の利用者が増えており、帰宅ラッシュ時には満席でキャンセル待ちになることも多いため、特急ではカバーしきれていない着席需要に応えることが狙いという。また、これまで座席指定列車のなかった東急も「追加料金を払ってでも座りたいというお客様の声があった」と話す。

近年、鉄道各社では「座れる通勤列車」の導入が相次いでいる。関東地方では、昨年12月に京急電鉄がこれまでの夜間の下り列車に加え、朝方の上り列車として「モーニング・ウィング号」の運転を始めたほか、今年3月には東武東上線の座席定員制列車「TJライナー」も朝方の上り列車の運行を開始した。従来から特急「ロマンスカー」を運行している小田急電鉄も、今春のダイヤ改正で東京メトロ千代田線から直通の特急を増発している。

また、京王電鉄も今春、同社では初となる有料座席指定列車を2018年春から運行開始すると発表。JR東日本も、2020年度から中央線快速電車に2階建てグリーン車を連結する計画だ。

各社が「座れる列車」を運行するのは、「追加料金を払ってでも座りたい」というニーズへの対応や収益増はもちろん、少子高齢化社会が本格化する中、快適な移動を提供することで沿線人口の減少を防ぎ「選ばれる沿線」となることも重要な狙いだ。「座れる列車」の運行活発化は、人口減少社会を見据えた「沿線間競争」の時代が始まっていることの表れともいえるだろう。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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