復興は現場から動き出す
上昌広著
東大医科学研の教授である著者は震災直後から福島の浜通り地区に入り救援活動を行ってきた。本書はその詳細な記録であり、新聞・テレビが伝えなかった現地の生々しい状況と人々の息遣いが伝わってくる。病院の機能が止まったいわき市からの透析患者搬送、相馬・南相馬両市での多数の患者への対応、飯舘村での健康診断、複数地区での被曝調査と除染活動。医者や看護師の多くが避難してしまった中、馳せ参じた医療関係ボランティアたちが悪戦苦闘し成果を収めていく様がビビッドに描かれる。
彼らは著者が作り上げたメーリングリストとその人脈によってつながった「個」であり、震災時にこうしたネットワークがいかに効果的か、中央や県の行政がいかに当てにならないか、筆法はまことに鋭い。現場を見ようとしないメディア追及も容赦なく、個人の称賛も批判もみな固有名詞で率直に述べられる。東北の医学教育の貧弱さへの言及も胸に迫るものがある。(純)
東洋経済新報社 1890円
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