海賊とよばれた男 上・下 百田尚樹著
創業者出光佐三(本書では国岡鐵造)の強烈な個性によって出光興産(国岡商店)は世界に例を見ない石油会社へ成長した。鐵造の波乱の生涯を描いた700ページを超える長編ドキュメンタリー小説だが、相次ぐヤマ場と細部まで目配りの利いた文章とで最後まで引き込まれる。内外の市場開拓に苦闘した戦前、終戦直後の破天荒なタンク清掃受託、メジャーや国内カルテル体制との徹底抗戦、そして何より世界を敵に回してのイラン原油引き取り。
どの場面でも鐵造の並外れた人間的魅力には圧倒される。日章丸が日本とアバダンを往復する一部始終は迫力十分だし、鐵造に心酔する部下たちが一体となって難局を乗り越えていく様はしばしば感動的でさえある。ドラマチックな企業小説として堪能できるだけでなく、人は何のために生きるのか、組織はいかにして火の玉たりうるのか、考え抜くことがどれほど大切か等々多くのことが学べる教材としても面白い。(純)
上 講談社 1680円
下 講談社 1680円
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