日本経済の突破口 東谷暁著
きわめて論争的な本であるが、晦渋な箇所はほとんどない。日米を中心に新自由主義、新保守主義の立場に立った規制緩和至上主義の政策、学説に対して、統計も援用しつつ歴史的事実や国際比較の面からも疑問を呈し、論破している。金融資本主義、時価会計やBIS規制、格差問題、医療制度、年金問題等々、『正論』の連載をまとめたものだけにテーマは多岐にわたって読み応えがある。
収録に当たり徹底的に手を入れたこともあり、書き下ろしでない場合に往々見られる重複や違和感は少ない。主張の多くはごく真っ当かつ十分説得的と思われるが、こうした「構造改革」批判は日本再生へ向けての貴重な問題提起でもある。
倫理観なきフリードマン、ベッカー、グリーンスパンは論外として、同じく痛烈な批判の対象とされた多くの日本人経済学者にはぜひ反論してほしい。なお最終節の、多様性についての言及は議論を深めるべき重要な論点である。(純)
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