核保有した北朝鮮、金正日は核放棄せず、流出阻止が最大の課題

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日米韓3国は、今回の北朝鮮の挑発に結束して対処してきた。バラク・オバマ大統領はロンドンのG20で韓国の李明博大統領と会談した。今年後半、オバマ訪日の計画も明らかになっている。麻生太郎首相も李大統領と広範囲にわたり協議した。

日米韓は今回の危機に当たり、緊密に連携した行動をとり、発射を強く非難する国連安全保障理事会の声明取りまとめにも一緒に奔走した。

ブッシュ前政権の8年間は、対北朝鮮政策での日米不一致が何度も露呈した。当初、日本政府は北朝鮮との協議がホワイトハウスのタカ派によって妨げられていると不快感を抱いたが、その後は一転して、アメリカは見返りもなしに北朝鮮に譲歩している、と考えるようになった。

オバマ政権は、ミサイル発射で麻生政権が低迷する支持率を上げようと、北朝鮮に対してタカ派路線を採用するのではないかと懸念した。

一方、日本政府は、オバマ政権が北朝鮮との2国間協議を模索するのではないかと懸念した。事実、ホワイトハウスはスティーブン・ボズワース前駐韓大使を北朝鮮問題の特使に任命した。だが北朝鮮はボズワース特使を鼻であしらった。

日本では多くの新聞が、日米両政府に安保理の戦略で齟齬(そご)があるという報道を行った。しかし実際には、アメリカは多くの点について日本の外交官の意見に従った。

オバマ政権の北朝鮮担当チームには、経験豊かな外交官がそろっている。彼らは、あらゆる対話を拒否するタカ派でないのと同時に、ずるずると譲歩を重ねるハト派でもない。

日米両国は、朝鮮半島に壊滅的な戦争を引き起こすことなしに北朝鮮の核能力を除去する有望な軍事的選択肢はない、との認識を共有している。アメリカ政府は寧辺などの核施設をピンポイント攻撃すれば、北朝鮮の核開発に壊滅的打撃を与えることは可能と考えているが、それを実行した場合、彼らがどんな反応を示すかまったく不明だ。イスラエルに核施設を爆撃された際、イラクとシリアが耐えたように北朝鮮も耐えるのだろうか。それとも韓国に全面攻撃を仕掛けるのだろうか。あるいは在日米軍基地に限定報復攻撃を仕掛けたうえで停戦を呼びかけるのだろうか。まったくわからない。

しかし、北朝鮮が限定的ながら一定の力を持つ事実を認めることは、彼らの核開発を黙認することではない。現在の情勢は金正日体制に不利だ。北朝鮮はいまだに国民の最も基本的な生存の条件すら満たしていない。アメリカの専門家たちは、北朝鮮の新たなリーダーは、真の非核化にもっと前向きな姿勢を示すのではないかと期待している。

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