政権交代論 山口二郎著 ~学者かつ実践家による政権交代「必要論」

政権交代論 山口二郎著 ~学者かつ実践家による政権交代「必要論」

評者 学習院大学法学部教授 野中尚人

 本書を読む時の最大の秘訣は、「あとがき」から読むことである。本書の場合、このことは内容を理解するうえで決定的に重要である。

著者はこの20年間ほど、自民党一党優位体制を批判し、イギリス型を範とする政権交代を実現すべく、社会党(当時)へのコミットメントにはじまる実践的な政治活動に奮闘してきた。つまり、本書の最大の特徴は、政権交代「論」という学者としての客観的な論考と、実践的な政治経験やプレーヤーとしての感想、あるいは後悔の気持ちなどがない交ぜになっていることなのである。

言い換えれば、自民党政治の強さ、逆に小泉政治の意味づけや自民党の衰退の流れなどについて、現場感覚のある論評が可能になっている一方で、事実認識と価値判断の峻別という点で多少の危うさがないとは言えない。良くも悪くも、これが本書の特徴であり、「面白さ」である。この点は、自民党政治の権化の一人であった小沢一郎・民主党代表に対する著者の評価が大きく変化してきていることにも表れている。

内容的には、政権交代のない政治がいかなる問題を孕んでいたのか、行政府を監視すべき司法機能の衰退や政治とメディアとの関係など、今後に向けた重要な指摘が多くある。総選挙を前に、誰もが一度よく考えておくべき論点であろう。

著者は、特定の価値や理念にコミットしなければ有意義な論争は不可能であり、結局は望ましい政治的な成果を得られないと主張する。実は評者自身も、著者が言うところの、コミットせずに「超党派的説教」を繰り返している「21世紀臨調」のメンバーである。私自身は、党派性を離れた議論にも固有の役割があると考えている。いかがであろうか。

やまぐち・じろう
北海道大学大学院法学研究科教授。専攻は行政学・政治学。1958年岡山県生まれ。東京大学法学部を卒業後、同大助手を経て北海道大学へ。イギリスのオックスフォード大学セントアントニーズ・カレッジ、ウォーリック大学で客員研究員などを務めた。

岩波新書 819円 240ページ

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