金融無極化時代を乗り切れ! 丹羽宇一郎著
かねて資本主義のありように警鐘を鳴らしてきた財界の良心ともいうべき著者が、金融危機、経済と倫理、財政赤字、地方、少子高齢化、農業や水や環境など多彩なテーマを縦横に語り論じている。多くの警告とともに提言もたっぷりある。
内容は平易で、主張はいずれも正論である。もし述べられていることが日本の政官財で定説として収まらないのであれば、そのことこそ問題だろう。あるいは、かねての持論でもあり冒頭で力説されている「70歳以上は舞台を去れ」という物言いに心穏やかでない人が多いのだろうか。
だがその言説はみな著者の半生により裏打ちされている。学生運動のリーダーから商社マンとしての努力と体験、そしてカネや権力や名誉から相対的に自由でいられた経営者としての力量。強固な気概だけが付与しうる説得力が全編に溢れる。危機感はひしひしと伝わってくるけれど、未来への希望も抱かせてくれる、当節見逃せぬ一冊。(純)
文藝春秋 1200円
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