「国立国会図書館」開発中のシステムにサイバー攻撃、再委託先から侵入…情報漏洩の責任はどこに?"根本的な解決策"として注目の★評価制度

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★3を必須基準として、最低限実装すべきセキュリティ対策を定義し、それを実施運用していることで称号を得られる仕組みとしている。現在、★3、★4を中心にその構築が議論され、それらの評価を担保する方法、実施体制については現在審議中である。まもなく制度案が公開される予定である。

経産省「セキュリティ評価制度」の考え方

今回の国会図書館の事案は、この制度の必要性を強く裏づけるものだ。「委託先が安全と言える根拠」を社会全体で共有できる仕組みがなければ、同じような間接侵入事件は今後も続くだろう。

サプライチェーンという“見えない境界”をどう守るか

国会図書館の事案は、単なる情報漏洩の問題ではない。「自社だけを守っても、サプライチェーンの弱点から攻撃されれば被害は避けられない」という現実を再び突きつけた。公共機関、大学、自治体、企業等、すべての組織はサプライチェーンの一部であり、単独で安全を確保することはできない。

その意味で、今回の事件は「委託先を含むセキュリティ統制」の重要性を可視化した出来事であり、日本社会全体のサイバー防衛の転換点になるべきだ。

委託先の評価制度の確立、契約段階での管理基準の厳格化、再委託先まで含めた監査、そして利用者データの取り扱いにおける透明性等、求められる対策は多い。しかし、どれか1つでも欠ければ同じことが繰り返される。

サプライチェーン全体を守るという視点こそ、これからの情報社会における最大の防御線である。今回の国会図書館の不正アクセスは、そのことを私たちに強く訴えかけている。

東洋経済Tech×サイバーセキュリティでは、サイバー攻撃、セキュリティーの最新動向、事業継続を可能にするために必要な情報をお届けしています。
森井 昌克 神戸大学 名誉教授

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もりい まさかつ / Masakatsu Morii

1989年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程通信工学専攻修了、工学博士。同年、京都工芸繊維大学助手、愛媛大学助教授を経て、1995年徳島大学工学部教授、2005年から2024年、神戸大学大学院工学研究科教授。情報セキュリティ大学院大学客員教授。近畿大学情報学研究所客員教授サイバーセキュリティ部門長。国立研究開発法人日本医療研究開発機構プログラムスーパーバイザー。情報通信工学、特にサイバーセキュリティ、インターネット、情報理論、暗号理論等の研究、教育に従事。加えて、インターネットの文化的社会的側面についての研究、社会活動にも従事。内閣府等各種政府系委員会の座長、委員を歴任。サプライチェーンサイバーセキュリティコンソーシアム(SC3)運営委員、同中小企業対策WG座長。2018年情報化促進貢献個人表彰経済産業大臣賞受賞。 2019年総務省情報通信功績賞受賞。2020年情報セキュリティ文化賞受賞。2024年総務大臣表彰。電子情報通信学会フェロー。

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