気候変動問題に関する株主提案に一定の成果。機関投資家も「日本株式会社」に財務リスクを認識させ、受託者責任を果たすべき
気象庁の発表によれば、今年6月から8月の日本の平均気温は統計開始以来最も高温だった。猛暑が常態化し、労働生産性の低下、売り上げの減少や農作物の価格高騰など、経済への悪影響が顕在化しつつある。
「猛暑インフレ」によって年間10万~30万円の家計負担増が生じているとも試算されている。
これ以上の気温上昇を食い止めるためにも、気候変動の原因である温室効果ガスの最大の排出源である化石燃料の採掘および使用の段階的廃止に向けた経済社会構造の転換が求められる。
今、行動すればまだ間に合うと言われているが、残された時間はわずかだ。
気候関連財務リスクへの対処は、受託者責任の一部
気候変動の悪化が、将来的に金融システムや経済全体の混乱につながると言われて久しい。すなわち、「気候リスクは財務リスク」であり、企業人としても看過できない問題だ。
私が所属する非営利法人マーケット・フォースは、投融資バリューチェーンの真の脱炭素化を目指している。企業が気候変動対応にしっかり取り組むことで競争力を維持できるように働きかけ、その一環として調査も行っている。
当団体は、日本の主要機関投資家5社(三井住友トラストグループ、日本生命保険、第一生命保険など)による、世界の化石燃料関連企業190社への株式投資額とクリーンエネルギー企業201社への株式投資額を分析・比較し、6月に調査報告書を公表した。
同分析結果によれば、クリーンエネルギー企業群への投資額(約6.5兆円、2025年2月末時点)は化石燃料関連企業群への投資額(約6.1兆円、同)を若干上回った。しかし、ブルームバーグ・ニュー・エネルギー・ファイナンスによって試算された、世界の平均気温上昇を1.5度未満に抑えるために30年までに求められる最低限の投資比率には、遠く及ばないことが明らかになった。
化石燃料関連企業群には、化石燃料の採掘または使用を今後、拡大する計画を持つ企業が含まれ、調査対象とした機関投資家の上述190社への株式投資の80%以上が、三井物産、三菱商事、エクソンモービルなど10社に集中している。
これら10社の化石燃料事業の拡大計画分だけで、二酸化炭素(CO2)換算で77億トンもの温室効果ガスが排出される。この77億トンという量は、過去およそ3年間で、世界全体で再生可能エネルギーの導入によって削減してきた排出量に匹敵する。つまり、これらの事業計画が実行されれば、世界の国や企業が積み重ねてきた排出削減の努力は一瞬で帳消しになってしまうのである。




















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