暗号を解読する量子コンピューターの登場迫る! 新たなセキュリティ問題に企業はどう対応すべき? 《出遅れると情報資産が盗まれるおそれも》
従来のコンピューターは、半導体(トランジスター)への電流のオン・オフによって「0」と「1」を表現しており、その最小単位はビットと呼ばれる。ビット数が大きくなるほど一度に扱える情報量が増加する。量子コンピューターでは、ビットに量子粒子(現世界で最小の物質)を使う。量子粒子には光子、電子、イオン、原子などがあり、それぞれを利用した量子コンピューターが存在する。
従来のコンピューターは、ビット数(ビット幅)とCPUのクロック数とコア数を増やすことで性能を向上させている。これらはそれぞれ、手で持てる量、手を動かす速さ、働く人の人数に例えることができる。
一方、量子コンピューターの性能向上には「重ね合わせ」や「干渉」などが活用される。例えば、量子ビットでは重ね合わせにより「0」か「1」だけでなく「0」と「1」が同時に存在する状態を作り出すことができる。こうした原理により、膨大な組み合わせによる検証を瞬時に行うことができる。
従来のコンピューターは組み合わせの検証を「総当たり」で1つずつ行うが、量子コンピューターでは総当たりをすることなく瞬時に回答を算出できる。この特性により、創薬や新素材開発、金融、AIをはじめ、あらゆる業界で活用が期待されている。ただし、大がかりな設備が必要になることや、量子ビットを増やして長時間にわたり安定した状態に保持すること、エラーやノイズの低減が課題となっている。
それでも、最近の量子コンピューターに関する発表や、東大発スタートアップ企業であるOptQCが光量子コンピューターの商用化を2026年度に目指していることなどを考慮すると、一般化の時期は遠くないだろう。
性能が高すぎて、暗号を解読してしまう
量子コンピューターの実用化が見えてきたことで、そのリスクも顕在化してきた。とくに話題となっているのは、既存の情報資産を守っている暗号(公開鍵暗号アルゴリズム)が量子コンピューターによって指数関数的な速度で解読される可能性があることだ。
実は、サイバー犯罪者が量子コンピューターの実用化を見込んで、暗号化されたデータであっても企業から盗み出すケースが増えている。これは「Harvest Now, Decrypt Later(今収穫し、後で解読する)」攻撃と呼ばれるものだ。



















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