会員限定

アテにならない「春闘賃上げ率」、全体の賃金伸び率と乖離が広がっているのは「カバレッジ」が違うから…「春闘の外」にある26年の賃上げ要因とは

✎ 1〜 ✎ 6 ✎ 7 ✎ 8 ✎ 9
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

なぜ、春闘賃上げ率と実勢賃金の間で乖離が生じてきているのか。その謎を解くには、春闘賃上げ率という数字がそもそもどういうものなのかを知る必要がある。

春闘賃上げ率調査は大きく2つの点で実勢賃金とカバレッジ(対象範囲の網羅度合い)が大きく異なっている。春闘賃上げ率調査が「賃上げの鈍い」部分を十分に捕捉できていないため、マクロ賃金との乖離が広がっていると考えられる。

まず、連合の公表する春闘賃上げ率は「労働組合員」の賃上げ率である。よって、労働組合のない多くの企業は含まれていない。

春闘=ほぼ大企業の賃上げ率

連合の25年度春闘最終集計について確認すると、調査対象の組合に属する組合員数は296.3万人だ。これは雇用者数全体の5%程度に過ぎない。また、労働組合を有する企業はそもそも大企業に偏っていることから、連合調査対象の企業も大企業に偏る。

調査対象の組合員数の内訳を見ると、組合員数が1000人以上の企業に属する組合員数が208.7万人と7割近くを占める。ほぼ“大企業の賃上げ率”を調べている調査だと言ってよいだろう。

なお、連合は組合員数300人未満の組合の賃上げ率を中小企業賃上げ率として公表しており、25年度は4.65%(全体:5.25%)となっている。この数字が用いられる形で、しばしば「大企業より中小企業の賃上げ率が低い」という議論がなされている。

しかし、この中小企業賃上げ率調査の対象となっている組合員数は34.9万人に過ぎず、全体に比べればごくわずかだ。

次ページ「組合がある企業は皆が春闘対象」ではない
関連記事
トピックボードAD