OECD調査【TALIS2024】日本の教員また「仕事時間が世界最長」、自己効力感や満足度低く「5年以内に離職が2割」の可能性?教職員を大切にする政策を

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公立小中学校教員の年齢別の離職状況(令和2年度間)
(出所)文科省・中教審「『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について関係資料(1)」

どんな場合に教員の離職意向は高まるのか?

OECDが開示しているTALIS2024調査全体の分析を読んでみると、興味深い結果が載っている。

●回帰分析の結果、仕事に全体的に満足している教員は、満足していない教員に比べて今後5年以内に教職を離れたいと考える可能性が5分の1である。この分析は教員の属性(性別、年齢、教育経験年数など)や学校の属性(所在地、社会経済的に不利な家庭が多いかどうか、特別支援を要する生徒の割合等)を統制した上での話だ。
●今後5年以内に教職を辞めたいと考えている教員は、自己効力感(self-efficacy)や授業目標の達成度が低い層(下位25%)に多く見られる一方で、これらのスコアが高い層(上位25%)では割合が低いことも示唆される。
●回帰分析の結果、生徒の規律や行動上の問題は、他の要因(業務量、多様な学習ニーズへの対応、説明責任、教育改革への対応等)よりも、教員の離職意向と強く関連している可能性が高い。生徒から脅迫されたり生徒から暴言を受けたりした教員、もしくは教室の規律維持を「かなり」または「非常に」ストレスの原因だと感じている教員は、そうでない教員に比べて、今後5年以内に教職を離れたいと考える可能性が約2倍である。
●平均すると、給与以外の雇用条件に満足している教員は、仕事全体への満足度が高く、今後5年以内に教職を離れたいと考える可能性が約40%低い。
●平均すると、政策立案者が教員の意見を重視していると「同意」または「強く同意」している教員は、今後5年以内に教職を離れたいと考える可能性が約35%低い。
(出所)OECD「Results from TALIS2024」を基に筆者が日本語訳

こうした知見は、日本の教員についても参考になるし、おそらく現場感覚としても合うところも多いのではないか。子どもとの関係がうまくいかず、授業や学級経営に困難をきたすケース等では、休職や離職は増える。

また、日本の教員の実態として、公立学校共済組合「ストレスチェックデータ分析結果報告書」によると、長時間勤務の人は減ってはいるものの、高ストレス者の割合は右肩上がりである(新型コロナで一斉休校のあった2020年を除く)。実際、文科省の調査でも、精神疾患で休職する教員はここ数年、増え続けている。

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