過労死ラインの教員が激減!部活動の地域移行「コベカツ」だけではない神戸市教委の働き方改革 教員採用試験「中・高教員」受験者数が112名増

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熱心に活動したい生徒は既に外部のクラブチームで活動しているケースも多く、「学校の部活動に対しては『あれば参加するし、なければないで構わない』という、大人以上に冷静なスタンスの生徒も多く、反対の声はあまり上がっていない」と竹森氏は言う。

一方、「コベカツ」への移行にあたり、地域クラブでの活動には会費が発生するため、経済的な困難を抱える家庭への負担が懸念されている。これに対し神戸市では、「就学援助制度の対象となる家庭に向けた支援を制度化できないかを検討している」(竹森氏)。

社会の変化に即した「ちょうどいい」教育活動を目指す

2024年度の神戸市の男性教職員の育休取得率は45.9%で、「一般の行政職員に比べると取得率は低いものの、以前では考えられないくらい男性教員も育休を取れるようになってきた」と竹森氏は話す。男性の育休期間は1~2週間から1年間まで、人それぞれだというが、竹森氏の感覚では「1カ月くらい取得する人が多い」とのことだ。

「育休中に代替教員が配置される状況が見えれば、多くの教員が安心して育休を取れるようになると思うので、代替教員の配置には力を入れています。短期間のケースや年度後半の配置は難しいのですが、ほかの教員に負担がかからないよう今後も配置に努めたいと考えています」

一方、メンタルヘルス対策には課題があった。2023年度に全教員を対象に実施したアンケートでは、回答した教員の65.1%が「メンタル不調を感じたことがある」と回答したにもかかわらず、2024年度まで神戸市教委としては独自に産業医を配置できていなかったのだ。そこで、2025年度から非常勤の産業医を2名配置し、1名だった保健師は5名に増員した。

「これにより教職員専用の相談窓口が充実し、個別の復職支援ができるようになりました。また、新規採用教員全員に対して面談を実施するなど、個別のアウトリーチ支援も強化していきます」

神戸市教委の働き方改革の取り組みは、教員志望者からも注目されているようだ。2025年度の教員採用試験では、ここ数年減少が続いていた中学・高校教員の募集枠の受験者数が720名と前年度から91名増加、2020年度の受験者数(725名)並に回復した。大学三年生等早期チャレンジ選考枠の受験者数も100名となり前年度に比べ21名増えた。

県外の現職教員から、「『コベカツ』への全面移行が本当なら神戸市の採用試験を受け直したい」という問い合わせもあったという。部活動指導を負担に感じていた教員や、部活動指導と教員生活の両立に不安を感じていた学生にとって、神戸市教委の改革は魅力的に映るのだろう。

「コベカツは志願者の増加に影響していると思います。市として時間外勤務の減少などはとくに打ち出していませんが、ご自身で調べたうえで取り組みに共感して志願してくださる方もいらっしゃるのではないかと見ています」

働き方改革が実を結び、教員の時間外勤務が減少している一方で、現場の教員からは「人間関係が希薄になった」「やりがいが低下した」といった声も聞かれるという。今後について竹森氏は、「数字だけを追い求めるのではなく、教員の時間外勤務が従来よりも減った中で、教育活動の質をいかに充実させていくかを重視していきたい」と話す。

「これからの教育活動は、『ちょうどいい』がキーワードになるように思います。教員同士のコミュニケーションも、しつこすぎず、淡白すぎず、『ちょうどいい』ものを目指す。学校行事も、誰もが満足できる『ちょうどいい』ものにしていく。『ちょうどいい』の基準は社会の変化に伴って変わるものなので、社会の変化にしっかり対応しながら、学校教育活動のあり方を考えていく必要があると思っています」

(文:安永美穂、写真:神戸市教育委員会提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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