「ゲームvs本」の時代は終わり、遊んでいるだけで「国語力が上がる」親が知らない付き合い方 子どもに「本を読みなさい」と言う前に渡したい

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『パワプロクンポケット』以外にも、『逆転裁判』や『シュタインズ・ゲート』など、さまざまなノベルゲームを楽しみました。いずれにしても、主人公を取り巻くキャラクターたちの過去や人間関係を読み解いていき、次にどんな行動を取るべきかをつねに考えさせられる。これが気付かぬうちに、国語の勉強になっていたのです。

私が成績を上げる勉強法を紹介する際にも、おすすめとして紹介する作品数は本(漫画を除く)よりノベルゲームのほうが多いほどに、ノベルゲームは私の読解力ひいては学力全体の礎になってくれました。

「本を読め」と言う前に…ゲームと読書は対立関係にない

もちろん、読書には固有の大きな価値があります。しかし、十分な読解力を持たないまま本を読んでも、文字をただ追いかけるだけになりかねません。その結果、「ページをめくっていただけ」で終わってしまうこともあるのです。

一方で、ノベルゲームは漫然と読み終わることが許されない仕組みになっています。たった一度選択を誤るだけで、その後の展開が大きく変化し、望まない結末(バッドエンド)に至ってしまうこともあります。だからこそ、プレイヤーは登場人物たちの一言一句に細心の注意を払い、言葉のニュアンスや前後の文脈を的確に読み取る必要があるのです。

さて、現在教育現場で重視されている「アクティブラーニング」は、

①情報を読み解く
②主体的に選択する
③結果を受け取り改善を行う

というサイクルでの学びです。

この点ノベルゲームも、①テキストを読み取り、②自らの意思で選択し、③その結果を受けて次の選択につなげる、という循環構造になっており、これはまさにアクティブラーニングのあり方そのものなのです。選択と結果を往復するうちに、「言葉と行動の関係」や「もし別の選択を取ったらどうなっていたか」を考えるようになり、自然と論理的思考力も養われます。

子どもに「本を読みなさい」と言うのは簡単です。しかし、娯楽にあふれた現代の子どもたちにとって、自由時間の大半を読書にささげるのは現実的ではありません。だからこそ、保護者ができる工夫としては「ゲームの時間の一部をノベルゲームに振り分ける」ことではないでしょうか。たったそれだけで、「遊んでいただけのはずが、読解力が上がっていた」という成功体験を獲得できるのです。

そうして読解の基礎を身に付けた延長線上に、素敵な読書体験が待っているはずです。ゲームと読書を、「対立関係」ではなく「補完関係」にあるものと捉えることによって、国語力を身に付けるチャンスは膨らんでいきます。

「国語力」とは、単なる語彙力と同義ではなく、相手の意図を理解し、自らの考えを深め、表現する力を指します。その意味でノベルゲームは、遊びの形を借りた国語の勉強に十分なりえます。子どもがゲームに熱中する姿を嘆くのではなく、そこに潜む勉強の要素をいかに拾い上げて導いていくか。これが、今日の保護者に求められる視点ではないでしょうか。

古くは平安の人々が和歌で言葉を磨いたように、現代の子どもたちはノベルゲームを通じて「読む力」と「選ぶ力」を養うことができます。読書とゲームを二者択一とせず、それぞれの強みを活かす。その柔軟さこそ、これからの学びに必要なものだと私は考えます。

(注記のない写真:マハロ / PIXTA)

執筆:Overfocus代表 神田直樹
東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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