転職する人が増える裏で「社内情報の持ち出し」が横行、懲戒処分や刑事告訴も…持ち込まれた企業側の責任は?個人の「モラル頼り」に限界

近年、企業間において人材の流動が活発になり、転職や出向、業務委託など多様な働き方が一般化している。こうした変化は、組織に新たな知見やスキルをもたらす一方で、情報漏洩という重大なリスクもはらんでいる。

実際に、金融業界や製造業、IT企業などで、出向者や退職者が在籍中に得た内部情報を無断で持ち出し、出向元や転職先で活用していた事案が複数報告されている。ある事例では、業務資料をスマホで撮影して外部に送信したケースもある。
どのような目的があったかもポイントになるが、持ち出しの対象が、自身が業務で取り扱っていた個人情報データベース等に該当すれば、個人情報保護法の「個人情報データベース等不正提供等罪」が、営業秘密に該当すれば、不正競争防止法の「営業秘密の侵害罪」がそれぞれ成立する可能性があり、持ち出された企業や持ち込まれた企業の信用も大きく損なわれる。
技術では防ぎきれない「人的」リスク
情報漏洩と聞くと、外部からのサイバー攻撃を思い浮かべる人が多いかもしれない。しかし、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が毎年発表している2025年版の「情報セキュリティ10大脅威 2025[組織]」においても「内部不正による情報漏洩など」は第4位に位置づけられ、10位以内にランクインしたのは10年連続10回目となり、外部からのサイバー攻撃と並ぶ深刻な脅威とされている。
また、個人情報保護委員会の年次報告書によると、2024年度に発生した内部不正による個人データの漏洩事案は64件であり、企業にとって看過できない脅威となっている。
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