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ミネベアの職人が生む人型ロボット用センサー、「指先の感覚」を再現する、3グラムの世界最小品

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人間は無意識のうちに、指先で同じことをしている。例えばニワトリの卵と鉄アレイを手に取る際、同じ力加減の人はいないだろう。重さや形状に合わせて調節しなければ、落としたり、割れたりしてしまう。

この繊細な感覚を機械で再現しようとすると、縦、横、高さと各ねじれ、計6方向の力を同時に測る必要がある。つまり、センサーには6つの検出素子を封入し、かつデジタル信号へと変換するためのIC(集積回路)まで積まねばならない。

センサーのスペシャリスト

開発チームに課せられたミッションは前述の通り、これらを「赤ちゃんの指」サイズに収めること。その責任者に選ばれたのが、半導体の微細加工を用いて造る、「MEMS」型センサーに詳しい永渡さんだった。

永渡実(ながわたり・みのる)/埼玉県出身。千葉大学大学院を経て、1999年にミツミ電機へ入社。CDドライブの生産立ち上げなどに従事した後、2007年ごろからMEMSセンサーの設計に関わる。開発チームの責任者として、圧力センサーや6軸力覚センサーの製品化を主導。趣味は小学生の娘と一緒にジョギングすること(記者撮影)

永渡さんは1999年にミツミ電機へ入社。学生時代は千葉大学大学院で磁気系の研究をしていたが、会社の方針で2007年ごろ、畑違いのMEMSに携わるようになった。猛勉強の末に頭角を現し、血圧計などに使う圧力センサーの製品化を主導した。

実績を買われての抜擢だったが、上司から6軸力覚センサーの話を最初に持ちかけられた際、可否を即答できなかったという。一方で、無謀とも思えるチャレンジに「面白そうだ」とエンジニアの血が騒いだ。

パソコン上で何度もシミュレーションを重ね、最終的に「ぎりぎり実現の可能性はある」と判断。2016年ごろ、本格的な開発を始めた。ミツミ電機はアナログ半導体で世界有数の技術力を誇るため、他部署の協力も得て、回路の構成はスムーズに進んだという。

一方、力を受け止め、その大きさを測るための「ひずみ」を生じさせるパーツには手間取った。金属粉を金型に入れて圧縮し、焼き固めるのだが、なかなか狙い通りの強度や精度が出ない。加工を担う協力会社と共に、無数の試作を繰り返した。

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