若手教員は夏休みに「越境」を、成長を止めない休息と変化への立ち向かい方 あまたの学校改革をリードした元校長が指南
私は中学校勤務でしたので、部活動を終えた18時頃からパソコンに向かう先生方の姿を日常的にみていました。その時点で勤務時間終了から1時間15分経過しているわけです。酒気帯び状態で自分のテストやレポートを採点されるのは子どもの立場でも困る。さらには、集中に欠ける状態で、車を運転して自宅に帰るなんて恐ろしいこと。
教育研究家の妹尾昌俊氏は、公立小学校の教員の約4割が不眠症傾向にあるということに論文※を示して警鐘を鳴らしています。
学校の働き方改革という言葉は世間でよく知られるようになりましたが、いまだに一人ひとりの先生が両手に持ちきれない仕事を持ち、背中に背負い、どれも消化しきれずに翌日に持ち越している状況があります。
まずは、夏休みは睡眠をしっかり取り、心と体を休めましょう。ショートスリーパーだと自負している人でも、短い睡眠で身体の疲れは取れても、メンタルの疲労の回復には至らないようです。メンタルが疲れていると、イライラして、つい言い過ぎてしまう、そのことについてくよくよして眠れない、翌日もすっきりできず……という悪循環、誰もが経験あるのではないでしょうか。
疲れを侮るべからず。そして自分を過信しないこと。私は長い教員生活の中で、20代、30代、40代、50代と、一緒に働く仲間を突然の病気や事故で失った経験があります。ご家族の悲しみを思います。
※「公立小学校教員の不眠症に関する業務時間分析 ー公立小学校・中学校等教員勤務実態調査よりー」 堀大介 青木栄一 神林寿幸 他
「コンフォートゾーン」を抜けて越境する
出口治明氏は人間を成長させるものは「旅、本、人」と述べています。教員として働いていると、かなり気をつけていないと、この3つは欠乏していきます。読書する時間がない、土日も部活動などで旅なんて行けない、学校以外の人と会ったりお喋りしたりする機会がない……そうやって、一生懸命働いて、働いて「学校の先生以外の自分」がやせ細っていくのは残念。
職場に行けば、よくも悪くもあなたのことを知っている人がいて、気の置けない仲間もいるかもしれませんが、そういったコンフォートゾーンの外に出ていって、外の人や社会と出会うのも大切なことです。
例えば学校の先生って、校区にお祭りがあれば、見回りに夜出てくる。それが当たり前だと思っていたし、地域の中で生徒と出会う楽しさもあるでしょう。だけど、あなたが校区に住んでいるのでなければ、自分の住んでいる地域の行事や祭りに「地域住民」として関わるほうが得るものは大きいのではないでしょうか。教員が「〇〇学校の先生」としてだけではなく「居住する町の住民」としての居場所や活動の場を持っていたら、世の中はもっと豊かになると思うのです。