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まさかの「NATO離脱」も? スロベニアが国民投票を実施/日本人が知っておくべきトランプ時代の安全保障をめぐる欧州各国の「温度差」

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EUに加盟しているからといって、NATOに加盟しなければならない道理はない。現に永世中立国であるオーストリアは、EUには加盟しているものの、NATOには加盟していない。ロシアがウクライナに侵攻するまで、北欧のスウェーデンやフィンランドもNATOに加盟していなかった。それがロシアを刺激する危険性に配慮していたためだ。

他国の防衛体制にただ乗りすることも可能

繰り返しとなるが、欧州のすべての国が、NATOの枠組みの下で、ロシアを仮想敵国とした防衛体制を強化することを望んでいるわけではない。それにロシアと国境を隔てている国の場合、国境を接している国の防衛体制にフリーライド(ただ乗り)することも可能だ。現にオーストリアは、ドイツやポーランドの防衛体制にフリーライドしている。

フランスのマクロン大統領と握手するスロベニアのゴロブ首相(写真:Bloomberg)

つまるところ、スロベニアもオーストリアと同じ道を模索することは十分に可能だという判断になる。確かにスロベニアは、かつてはイタリアやクロアチアと国境紛争を抱えていたが、EU加盟で近隣諸国との間で紛争を抱えることがなくなった。ましてロシアからの侵攻リスクも小さいため、最低限の軍備を維持しておけばいいのである。

こうした本音を持つのはスロベニアだけか。例えば、イベリア半島のスペインを考えてみたい。スペインは戦間期の内戦時に、ロシアの前身国家であるソ連による爆撃を受けたことがある。しかし、そもそも国境を大きく隔てているし、現在は両国間の係争事項もない。つまり、ロシアを念頭に置いて防衛体制を強化する理由がない国である。

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