一方で、5月の上昇については、参議院議員選挙が近づく中、財政拡張的な公約を掲げる政党の勢いが高まり、長期的な財政リスクが意識された要因が大きいという。
5月20日に実施された20年債の入札が不調となったことも追い打ちをかけた。投資家の需要を反映する応札倍率(応募額÷落札額)は2.5倍と2016年以来の低水準となり、入札の不調度合いを示すテール(落札の平均価格と最低価格の差)は1円14銭と1987年以来の水準まで急拡大した。これにより超長期金利が一斉に跳ね上がり、市場の動揺が表面化した。
さらに丹治氏は、「超長期債はそもそも需給が崩れやすい構造を抱えていた」とも指摘する。
その「構造的問題」とは、超長期債の主な保有主体である生命保険会社の事情だ。生保各社は長らく、負債側のデュレーション(保険金支払いまでの平均年数)に比べて、資産側のデュレーション(保有する国債等の平均年限)が短い「デュレーション・ギャップ」の問題を抱えていた。資産と負債のデュレーションが大きくずれていると、金利が変動した際に資産と負債の価値の変動幅が異なり、大きな損失を被る可能性がある。
加えて、2025年度から適用されるESR規制(経済価値ベースのソルベンシー規制)においては負債が時価評価される。デュレーション・ギャップが大きいと金利が動くたびに自己資本も大きく増減しかねず、健全性の観点からもリスクがあった。
想定をも下回った生保の「買い」
ESR規制に対応するため、生保各社は近年まで年限が長い国債を積極的に買い入れることでデュレーション・ギャップの縮小を進め、超長期債の強力な買い手となっていた。それが昨年の始め頃には各社が規制対応にメドをつけたことで、超長期債の買い入れが徐々に縮小していったという。
こうした中、実は財務省は2024年度の20年債の発行を減らし、2025年度の当初国債発行計画でも30年債や40年債の発行額をそれぞれ1.2兆円減額していた。とはいえ、「構造的問題」による需給の緩みを解消するには不十分だったようだ。
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